schole〜スコレー〜
六章
さて、タマ。じゃやるけど。失敗しても気にすんなよ!
『気にするどころの話ではないんじゃが!?』
はっはっは。
俺は心の中で笑い声をあげ、現実では息を深く吸った。
「目覚めよ達夫おおおおぉぉぉおおっ!!」
そう叫び、俺はチュンの元へと走り出す。
「おいおい。君の脳はどうなっているのかね。先程も述べた通り」
瞬間、周囲の研究員達が俺へとわらわら襲いかかってくる。
「私に攻撃を加えようとすれば、彼らは自動的に君を止めるようになっているのだが」
もちろん、コロ達の命の保証もできないってんだろ。
だが、そこにはタイムラグがある。俺がチュンに飛びかかった所で、早くともそこから数秒かは猶予があるだろう。
「全く君もどれほどにぃっ!?」
台詞の途中で、タマの必殺技を使ってチュンの動きを止めてやった。
「ぐ、ぅっ!」
うめき声をあげてはいるが、チュンの口元には笑みが。そのいやらしい笑顔が素敵だ。
研究員らの腕は俺へと伸びてきているが、それに捕まる寸前、俺はチュンの体を思い切り押し倒してやった。
チュンの上に俺が馬乗りになり、それを引っぺがそうと研究員達が俺に掴みかかってくる。
「ふはははは!」
所詮こいつらはただの人間。俺にダメージを与える事はできても、俺をチュンから引き離す事は難しい。もしくは時間
がかかる。
その隙に。
俺はチュンの右手首を掴み、その口の中へと突っ込んでやった。
「ぐぉおっ!?」
俺の能力が切れ始めたのか、チュンはもがいているが、もう遅い。
「お前の能力! 相手の口の中へ指を突っ込めばそいつを操れるんだったなぁ!? だったらそりゃまさか自分が対象
外って事はないだろ!? その体は元々チュンの物じゃないんだから」
チュンが驚愕の表情を浮かべる。ははは、これは想定してなかったんだな。かわい子ちゃんめ。
「なぁ達夫! お前が能力を使ってチュンを操れよ。いやいや、操らなくても良いな。ある程度は自動的に作動しちまう
能力らしいから。すでにチュンの意識は弱まってるだろ。今がチャンスだぜ達夫君。父親と会話がしたけりゃ、自由にそ の体を動かしたいんなら、ほら叫べ! 俺がこの体の支配者だってな!! ついでに研究員達の動きも止めてくれると 助かるぜ」
チュンが目を見開き俺を押しのけようとしてくる。背後からの研究員達の腕とダブルでこられると。ちょっと、やばい感
じかもしれない。
早くしてよ達夫君!
『主も考えたのう。成程、現にわしが体を乗っ取られておるわけじゃしな。能力を使えばそれも簡単にできるか』
おいおい悠長な事言ってんじゃねえよタマ! 何か失敗しそうな感じなんだけど!?
痛い痛い引っ張らないで天使のように美しい俺様の髪の毛がっ! クソ研究員共大人には興味ねえんだよ!
『慌てるでない千秋。ほれ。チュンの姿を見ろ』
………お? チュンの動きがびたりと止まっている。目も閉じてるし。成功か?
しかし、研究員達は依然として俺の体を引っ張っている。どうなってんだ。
『成功じゃよ。じきに奴らも止まる。すでに、この体は達夫君のものじゃ』
マジで?
あ、ホントだ。チュンの目が開かれた。さっきよりも微妙に大きな目。瞳には輝きが灯っている。
「止まれ!」
チュン――――いや、達夫君が叫ぶと同時に、俺の体は拘束から放たれる。
研究員達は皆、体を起こしその場に直立していた。
もう大丈夫だろう。名残惜しいが俺は達夫君(チュンの姿はしているが)の上からどき、近くの机に腰掛ける。
「大丈夫か達夫」
「…………はい。いろいろ、ありがとうございます千秋さん」
別に達夫に代わったからって声も変わるわけじゃないんだな。そりゃそうか。
「あ、俺の名前覚えてたんだ達夫。まぁ精々俺に感謝しろよ。その代償はきっちり払ってもらうんだからさ。その………
…体でなぁ!!」
「? よくわかりませんが、恩人の頼みなら何でも聞きますよ」
「ふふふふふ、俺はその言葉、ちゃんと記憶したからな!? 後で言い逃れしても遅いぜ!? 俺の脳味噌が証拠
だ!」
『言葉の意味を理解しておらんだけじゃ。止めておけ』
そんな事は知らねぇよ! 子供だろうと何だろうと、むしろ子供だからこそ俺はその体をいただく。
『本当にこやつは…………』
「地下のコロさん達の拘束も解かれているはずです。そのうちここへ現れるでしょう」
「手際が良いぜ達夫。…………さて、では今後の話に入ろうか」
「今後? この研究所の事ですか? もちろん父さんにお願いしてすぐにこんな研究止めさせますよ?」
「違う! 全く! 恩人の言う事はしっかり聞こうね!」
俺が達夫を助けたのは、タマの仲間達のためだけじゃない。他にも達すべき目的はあるんだ。
「良いか達夫? 俺の言う事を聞き漏らすなよ。これ命令ね。あー、確かにタマの仲間を助ける事は重要だ。それがタ
マやコロの目的だしな。お前も後で父親と会話でも何でもすれば良いよ。とりあえずは、冬子も救出できてナイスな感じ だ。だが! それじゃ俺はどうなる!? ついでにチュンはどうなる!? 俺らの目的はどうなる!?」
「は?」
『は?』
「それに研究を止めたら、他の研究所の連中が黙ってないんだろ? ははははは、だったら道は一つしかないじゃない
か」
『おい、主何を言うとる』
ここまで俺が何のためにお前に協力してきたと思ってるんだタマ。まさかお前の仲間助けるだけが目標なわけないだ
ろ。
「今後! チュンではなく、この俺が研究所を支配する!!」
「は?」
『は?」
「あのさー、俺様がこんなロリショタハーレムを目の前にみすみすと潰しちゃうわけがないだろ? あ、これロリとショタ
のハーレムって事な。ロリショタのハーレムって意味じゃないからそこ気をつけて」
「?????」
達夫は何も理解していないようだ。初々しくて興奮する。
『な、ち、千秋! 主どういうつもりじゃ!』
安心しろよ。ちゃんとお前の仲間は助けただろ? 支配っつってもチュンほど厳しくはねえよ。
『いやいやそういう問題ではなかろう!?』
「達夫にもわかるように説明してあげよう。つまり、他の研究所からの目くらましにもこの研究所は機能してないとまず
いわけだ。そしてタマの仲間も、助けられたからってそこら辺うろうろ歩いてるわけにもいかない。てかできないし。だっ たら、このままここで生活すれば良いじゃんって事だ。まぁ一日一人ずつ、所長室に足を運んでもらう形にはなるが。 あ、それもあれだぞ? 俺もそこまで鬼畜じゃないから、強制はしない。任意ね任意」
『か、考えようにはよるが、さすがに』
「よくわからないのですけど、僕らは自由に生活を送れるんですか?」
「おうよ達夫! 普通に学校通っても良いぞ。チュンの姿だけどな。好きに使え」
「それなら僕に文句はないです。どうぞご自由に千秋さん」
「存分に好き勝手するぜ!」
ほらタマ。達夫はおっけーだってさ。別にお前らに迷惑かけるわけじゃないだろー? むしろ助けてやるって言ってん
のに。拒む理由がどこにある! さぁ! 俺を受け入れるんだ! 体を曝け出せ!!
『ぐ、く、うぅううう……』
まぁ別に駄目なら駄目でも良いけどな。果たしてお前に俺からこの体を奪いとる事ができるかな!?
『酷いぞ千秋! ……………く、し、仕方ない。千秋、主の意見を、認めよう』
はい交渉成立ー。
『くぁーっ! もっと早くこやつの魂胆に気づいておれば!」
ドジっ子属性付いてるのに気づけるわけないじゃんタマ。
「タマ! 無事か!?」
「チャタマちゃん!」
お。
ドアが押し開けられ、コロと冬子が部屋の中へ入ってきた。
「コロ。お前話聞いてた?」
「…………ん? 何だ?」
「聞いてなかったのか。いや、俺がこの研究所の所長になろうかと思うんだけど、どう? ちなみにタマの了承は取っ
た」
俺の言葉に、暫しあごに手をやり考え込んだ後、コロはおもむろに口を開いた。
「タマがそう言うのなら、俺はそれに従おう」
「さすがコロ。話がわかる」
なかなか上手くいくな。すんなりとハーレムが出来上がりそうだ。
『あぁ………やはりわしがもっと千秋を制御しておくべきじゃった……』
まーだぶつくさ言ってんのかタマタマは。
『二度続けて呼ぶな!!』
ははははは。
「んじゃ、残るは一人だな。なぁ達夫。研究員とか、タマの仲間はもうお前の能力から解放されてるのか?」
「は、はい。さっき能力切りました。たぶん」
「じゃあおっけー。コロ。達夫が逃げないように見張ってて」
「了解した」
「え? え?」
達夫はコロに睨まれ不安そうな表情を浮かべている。そそるぜ。
俺は達夫に歩み寄り、その右手人差し指を口の中へと突っ込んだ。
『何をしておる!?』
「チェンジだよチェンジ。ほらチュンでてこーい」
俺の言葉が聞こえたのか、達夫の動きがびくりと止まる。
数秒後、再度動き出した達夫の口からはこんな一言。
「どういうつもりなのかな萩本千秋」
チュンだ。ま、達夫が能力によって裏返れるんなら、そりゃチュンにも同じ事が言えるよな。
と、そこで遠方より驚きの声。
「え? ま、まさかチャタマちゃん、あっちゃんやったん!? うわーお、恩田冬子、一生に一度のメガントびっくりだZE
☆」
あー、そっかこいつにはまだ何も言ってなかったか。でも話の腰折るなよ。
「あーあー冬子。説明は後でゆっくりしてやるから今は黙っててくれる?」
「OKあっちゃん!」
さ、話を戻そう。
「まぁとりあえずだな。俺様は聖母マリアのように慈悲深いのさ。アリとか一匹も踏んだ事ねえ。そんな俺様の愛でチュ
ンの目的も果たしてやろうじゃないかって計らいなんだ。だってタマとかコロとか達夫とかの願いも叶えてるのに、チュン だけ仲間はずれとか可哀想じゃね? というわけでチュンはこの研究所の副所長に任命しよう。共にハーレムを築き上 げようじゃないか!」
『馬鹿げておる…………』
タマの深いため息が脳に届く。
「―――――私が所長では?」
「駄目だね。そこの力関係はっきりさせるためにお前を一回屈服させたんだろうが」
「私の能力が君の計画には必須だと思うが?」
「必須ってわけじゃねえよ。あったら便利だけどな。俺は俺の力だけでもどうにかやっていく自信はある。それが俺、萩
本千秋様さ!」
人差し指を明後日の方向へ向け、決めポーズを取る俺。ここ大事。
『主、そのポーズださいぞ』
マジで!? 子供人気獲得のために練習したのにこのポーズ…………ロリっ子本人からそう言われたんなら止める
しかない…………くそぉ。
「……まぁ、あれだ。ぶっちゃけお前が途中で裏切ったとしても、俺は何度でもお前を屈服させられるだろうしな。余裕
余裕。今回だっていけただろ? てか、達夫いるしな。そう簡単には行動に移せないさ」
もう達夫もそこそこ精神強くなってるだろうしな。ちょっとでも指が口に触れればひょいひょい入れ替われるだろ。
「………………条件がある。それを君が飲むのなら、私は副所長の地位に甘んじるとしよう」
「言ってみ」
「君にとって、金や物品はいらないのだろう? ならば、私がそれらを独占しても構わないのだね?」
「もちろん。なんならお前、その管理の責任者もやって良いぜ」
「は………ふははははははははっ!!」
俺の言葉に、チュンは高らかに笑い声を発した。
「認めよう。萩本千秋。君がここの所長だ」
決まりだな。
「うははははは! よっしゃあこれでこの研究所は俺のもんだな! いやー、今回はホント儲け物だぜ! ありがとうタ
マ! お前のおかげで俺の夢が現実味を帯びてきた!!」
『嫌々ながらも聞いておくがその夢とは何じゃ?』
よく聞いてくれた!!
「みんな! 今タマが良い質問しました! 確かに具体的な目標がはっきりしてた方が組織もうまく働く! まぁ、当然、
手始めとして全国に点在してるっつう研究所を全て飲み込むところからだな」
「その次は?」
チュンがにやりと笑う。
「当然、世界進出だろ。日本だけとか狭い狭い。俺は和ロリだろうが洋ロリだろうが何でもいけるんだよ。最初はロシア
辺りから攻めてくか。あそこ質高いし。ロリもショタも」
「………………それが可能かどうかはわからぬが、その次は?」
今度はコロが顔をしかめてそう口を出す。
「その頃には俺らの存在も世界中に認知されてるだろうからな。もうそこまできたら目標達成みたいなもんだろ。そんで
その目標とはずばりこれ。ロリータ王国の建設だぜ! あ、ちゃんとショタ市国も作るぜ? 首都とかに。国民は全てタ マの仲間達もしくは十二才以下の子供。十三才に達した時点でそいつは王国から追放する。どうだ!?」
『無茶苦茶じゃ………狂っとる』
世界中が認めちまえば狂ってるなんて言う人間もいなくなるだろ。
「今のままでは夢物語だろうね。しかし、私や萩本千秋の頭脳。それに同士達の存在というのを武器に闘えば、可能性
はある。面白いじゃないか」
「わかってんじゃんチュン! 良いよ良いよー、チュン副所長兼参謀にしてやるよ」
「あっちゃんあっちゃん! 私は私は!? 何担当!?」
「冬子か。お前はまぁ庭掃除とかじゃね?」
「びゃああああああああんっ! あっぢゃんびぼびいいいいいっ!!」
久しぶりにこいつの泣き声聞いた気がするな………。
「あーうるさいうるさい。じゃあ良いよ。お前所長秘書」
「やっだあああああっ!! ありがとあっちゃん!!」
全くこいつの扱いだけはいつまで経っても変わらないだろうな。
「ついでだから決めとこう。えー、コロと今太は攻撃隊長ね。そんで、達夫の親父さんは指揮官。中間管理職な」
「了解した」
コロが俺の言葉に頷く。ちなみに達夫の親父さんは未だに意識が戻ってないので放置。
「さて、じゃあこれよりLS計画を発足する!! LとSは察しの通り頭文字な。ロリとショタの。じゃ、みんな、いくぞー!」
「「「「おー!!」」」」
『お、おー』
何だかんだ言ってかけ声に乗ってくれるコロやチュンやタマが堪らなく愛しい。
あとでベロチュー三連発だぜ。タマとは心の中でだけどな。
『遠慮しておこう』
全くタマはもー可愛いなあっ!!
しかし、兎にも角にもこれは始まり。ここから俺の覇道が始まるのである。
覚悟しとけよ。この世の全てのチビッコ達。
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