ビクリと身体を大きく震わせて、驚いたヴァッシュは勢いよく顔を上げる。
「ちょっ、変な触り方すんなよ!もう離れ・・・んうっ・・・」
視界が急に黒に覆われたと思った次の瞬間には、煙草の臭いと味がヴァッシュの口内に深く
入り込んできた。舌を捉え、絡みつく生温かいそれは、ゆっくり蠢いてヴァッシュの歯列の
裏側をも犯し、吐息まで絡みとっていく。反射的に引こうとした身体は、いつの間にか腰をがっちり捕らえられており、全く自由が利かない。
身体の奥底で小さく燻っていた感覚が、腰の奥から一気に湧き上がり背筋を這い上がっていった。
目の前がぶわっと白く染まり、頭の芯まで痺れていく。無意識にじんわりと涙が滲んだ。「・・・くふぅっ・・・んんっ・・・」
それに何とかして贖おうと視界一杯に広がった男の背中を叩けば、更に深く深く口内を貪られる。
唇が離れていく頃には、ヴァッシュの身体の殆どはウルフウッドの腕の中に落ちてしまっていた。
結ばれていた二人の間の透明な糸が、名残惜しそうにぷつりと切れ、その光の筋がヴァッシュの
口角から顎に伝わる。ウルフウッドは、満足そうにニヤリと笑いその跡を舌で辿った。
「まだワイ、触らせてもらってへんトコあるんやけど?」
揶うような口調に、まだぼんやりと呆けていたヴァッシュの思考は、一瞬にして現実に引き戻される。
そして怒りに任せて、目の前でいやらしい笑い方をしている男を怒鳴りつけた。「じ、冗談じゃないよ、このエロ牧師!やり方が卑怯だぞ、お前!!」
「卑怯〜?何がやねん。こっちが好奇心と更なる向上心(?)で、ロスト・テクノロジィを体感させて
もらとったっちうのに、そっちが勝手に、やーらしい気持ちになったんやろが」「な!?ち、違うっ!嘘だっっ!!」
さらりと返された返事に、全身をいつも着ているコートよりも真っ赤に染め上げて、ヴァッシュは
拘束から逃れようと身を捩じらせる。「コラコラ、おとなしゅうせぇって…」
「・・・ひぁっ・・・!!」
抵抗を封じ込めるために、ウルフウッドはいきなりヴァッシュの股間に指を滑らせた。
「やめ・・・嫌だっ、ウル、ふっ・・・」
「へぇ、ココの部分も、柔らかい素材でできとんやなぁ。伸縮自在でよかったやん」
「・・・う・・・くっ・・・」
アンダーの上から感触を確かめるように緩やかに撫で上げられ、ヴァッシュの身体がビクビクと
跳ね上がる。「ワイは、このごっつい服の性能を確かめてやっとるだけやで?」
確かにウルフウッドの指は、ヴァッシュの身体に直に触れていない。しかし、アンダーの
上からでも、的確にヴァッシュの感じやすいところを探り当て嬲っていく。碧い双眸が深紺のそれを睨みつけた。しかし、情欲が浮かび上がりつつある潤んだ瞳の力は
実に弱々しい。流されまいと男の服をきつく掴んだ手も、次第に力を失っていく。そんな様子をウルフウッドは楽しそうに見る。濃紺の瞳を細め、口端を引き上げて笑った。
ぞくりとするような色気を含んだ表情を間近で見せつけられ、嫌でもヴァッシュの性感は
高まっていく。「諦めて、ワイに全部触らせぇ・・・」
眩暈がする程甘く低い声を耳元に注ぎ込まれ・・・僅かに残っていたヴァッシュの身体は
完全に男の腕の中へと墜ちていった。
「・・・は、あっ・・・う・・・んんっ・・・」
二人以外存在しない空間に、ヴァッシュの押さえきれない嬌声が艶かしく響いている。
後ろから抱きすくめられ、耳朶を甘噛みされると立っていられなくなった。
崩れ落ちそうになる身体は、牧師の広い胸と肩に体重をかけることで、どうにか支えられている。
その間にもウルフウッドの悪戯な指は、ヴァッシュの身体中を弄り、更に追い詰めていく。ヴァッシュの下肢の間には、ウルフウッドの太い脚が入り込み、閉じる事もできなくなっていた。
「やぁ・・・も・・・やだ・・・ウル・・・フ、ウッド・・・」
逃れようと身を捩れば、敏感になった部分がウルフウッドの脚で擦れ、ヴァッシュは激しく身悶える。
「嫌やあれへんやろ?こんな全身で感じとるのに、何言うてんねん」
「・・・痛ッ・・・ぁ・・・っ!・・・」
赤く色付き始めた胸の飾りを、ウルフウッドは薄いアンダーの上から摘み取り、捻り上げた。
ヴァッシュは白い首を、男の肩に擦り付けるように仰け反らせ、その衝撃を受け止める。
一瞬の鋭い痛みの後に訪れるじんわりとした甘い痺れに、ヴァッシュは戸惑う。
この破戒牧師が自分に与える感情に、その感覚は似すぎていて、ふいに泣きそうになった。『でもさ。それは、もっともっと痛くて…残酷な程、甘いんだよなぁ』
自嘲気味に小さく笑うと、敏くそれに気付いたウルフウッドが、窘めるように脚をグイと突き上げる。
「っあ・・・!!」
「へぇ、別んコト考えとるなんて、余裕やなぁ?」
「ち・・・がっ・・・・・・んんっ・・・」
熱に潤んだ眼差しで肩越しに見上げれば、噛み付くような口吻が与えられた。
受け止めきれない唾液が顎から喉元へと伝わる。
そんな些細な刺激でさえも、今のヴァッシュは快感として受け止める。
全ての神経が、剥き出しになっていくような感覚に溺れそうになった。貧欲に番っていたわりには、比較的あっさり開放した唇に執着など見せず、
ウルフウッドの舌は再びヴァッシュの耳朶を甘噛んでいる。
太股の内側、脚の付け根など、ヴァッシュの下肢を這いまわり、淫猥な動きをみせる男の指は
一番触れて欲しい場所を綺麗に避けていた。
脇腹を撫で上げられながら、胸を弄られ、ヴァッシュの眉根が切なげに歪む。
明確な刺激を与えられない身体は、内側からじりじりと焦れ、荒れ狂わんばかりだ。
ヴァッシュは腰の奥の奥にある、熱く濃密な塊を吐き出したい、という思いに駆られ
淫らに腰を揺らめかせた。
「・・・もう、イキたいんか?」
「う、くぅ・・・ああっ・・・は・・・ぁ・・・」
耳の後ろをきつく吸い上げ、朱の刻印をヴァッシュに刻みながら、ウルフウッドは答えの
分かりきった意地悪な問いを投げかける。限界近くまで昂ぶっているヴァッシュは、がくがくと首を縦に振って、ウルフウッドに強い刺激を乞う。
「・・・せやけどなぁ」
ヴァッシュの下肢を割っていたウルフウッドの脚が、するりと離れていく。急激な支点の消失に
ヴァッシュの膝が崩れ落ちそうになったが、大きな手が腰の部分を受け止め、支える。「ワイ、おどれの身体に直接触れる許可は、まだ貰うてへんし」
「そ・・・んな、の・・・・・・んあうっ・・・!!」
ウルフウッドがヴァッシュの腰にグイと自分の下腹を密着させた。
アンダースーツとスラックス、下着を介してでも、ウルフウッドの昂ぶりをダイレクトに捉えてしまい
ヴァッシュの内側がずくりと疼く。
強烈な射精感が腰を熱くし、先走りの蜜が溢れてアンダーの内側をじわじわと濡らしていった。
「身体・・・触ってもええか?」
「はぁ・・・あっ・・・い、いからっ・・・早・・・、も・・・ぉ・・・」
「・・・・・・言うたな?」
ウルフウッドは口元に淫猥な笑いを貼り付け、ヴァッシュの耳朶の内側に唇を寄せて囁く。
「なら、おんどれの悦えトコ、全部触ったろ・・・・・・なぁ?」
「・・・っ・・・あ・・・ぁっ・・・」
ゆっくりとウルフウッドの左手がヴァッシュの下肢へ下りていく。
それをヴァッシュは霞む視界の端で捉えた。「・・・ヴァッシュ」
情事の時にしか呼ばない名前を、耳の奥で深く甘く囁かれる。
「っ・・・やぁあぁぁっ・・・・・・ッッッ!」
ウルフウッドの熱い指が、アンダーの隙間に差し入れられ素肌に触れた瞬間
ヴァッシュは絶頂に達していた。
アンダーの内側で受け止め切れなかった淫液が、だらだらと内股を伝わる生々しい感触を、
ヴァッシュは愉悦に崩壊しかけた意識の片隅で感じていた。