海賊版フロッピードライブにご注意を

知り合いから外付フロッピードライブとフロッピーディスク(以下FD)十数枚を預かりました。
なんでも、物置を整理していたら懐かしいFDが出てきたそうで、しかし往時のPCはもう持ってないのでUSB対応のFDドライブをネットで取り寄せたそうです。
ところが、届いた品にFDを挿れてみたものの、全く読まずただフォーマットしろと無愛想なメッセージが表示されるだけ。

他のFDを挿れたり、振ってみたり叩いたり、PC側のUSBポートを変えてみたりと一通りのことをしてみても、にべもなく「フォーマットしますか?」の繰り返し。

それで私に泣きついてきたということです。
見ると、FDには一枚一枚にラベルが貼ってあるのでブランクディスクではなさそう。いくらなんでもFDが片っ端から壊れた訳でもあるまい。興味を惹かれたし、なによりFD一枚一枚にタイトルや内容などが几帳面に書き込まれているその情熱にほだされてしまいました。

確認

早速繋いでみたところ、ウチのWindows 7環境でも同様の反応を示しました。Mac OSX、Classic MacOS 9.2.2もダメ。
まずは原因の絞り込み。ウチにあった適当なFDをこのFDドライブに挿れてみたところ、すんなりマウントしました。

やっぱFDが破損してるのかな、と思ったものの腑に落ちない。
確かに私もFDを使っていた頃は、保存しといたデータが開けなくなったとか、買ってきたメディアがほとんど不良品だったみたいな経験もありましたけど。

このフロッピードライブの正体

そもそもこの手の機器は、ユーザ側はなんも手間を掛けることなく、プラグアンドプレイで容易に使えるもんです。
逆に言えば、多くの場合ユーザ側ができることも限られてくる。もし使えなかったとしても、せいぜいホコリを飛ばすとかポートを変えるとかお祓いするとかホントそんな程度かなと。

でも取り敢えず、思いつくことは確認してみました。

ウチのPCのBIOSにフロッピー関連の設定があったかどうかは確認してませんが、あったとしても弄らない方が無難っぽい(参考リンク:ろゆっく コンピュータ資料室)のでここは一旦パス。

じゃあドライバはどうだろうか。
FDドライブ裏面のシールにはFD-05PUBという型番が確認できます。これを手掛かりに検索したら……思いがけない情報に行き着きました。FD-05PUBの製造元であるTEACが、この機種の海賊版が出回っているので注意喚起のプレスリリースを出しているのです。
そもそも「TEAK=オーディオメーカー」が私の認識だったのでその小さな発見もありつつ、リンク先から引用すると《海賊版が市場で流通しており、残念ながら未だに根絶に至っておりません》とは穏やかではありません。

そしてその見分け方は……
詳しくは上のリンク先を見ていただくとして、《海賊版には”Made in China”(中国製)と表示されておりますが、当社では中国でのポータブルUSB フロッピーディスクドライブ「FD-05PUB」は製造しておりません》とのこと。

いま私の手もとにある、預かり中のFDドライブを見ると……思いっきりMade in Chinaじゃんか。

確かに本体やマニュアルにメーカー名は見当たりません。
知り合いによるとこの品は、某大手通販サイトで千円台で出ていたのを買ったとのこと。一応新品。

私はその商品ページを確認してませんが、もし製造国が確認できなかったりノーブランドだった場合は手を出さない方が賢明かと思います。知らないメーカーも要注意。
ただし、メーカー品を装った不良品も流通しているようなので(このリンク先の品も意図的にシールで製造国名を隠してますね)あとはレビュー欄の印象で見抜くしかないのか。
私もざっといくつかの商品ページを見ましたが、商品説明に「Windows 98 SE / ME / 2000……対応」あるいは「USB 1.1 / 2.0 / 3.0 互換」と謳っててもそれらは3モード(後述)と直接関係ないので無視していいです。ましてや説明文が【思い出を思い出してください】とか日本語が怪しいものはさすがに疑うべきです。

ちなみにFD-05PUBの正規品はマレーシア製だそうです(参考記事:ティアック、3.5インチUSB FDDの海賊版を警告)。

海賊版のことは一旦置いといて、ドライバの話に戻ります。
探してみるとBUFFALOの公式サイトにまだありました
このFD-05PUBはOEMとして他社に供給されているようなので、このドライバも使えるんじゃないかと思います。ただこれ、PC98とかDOS/V用、あとMacでもClassicの8.6用となってます。最近のPC(といっても2000やMe以降)であれば、USBポートに挿せばドライバも自動でインストールされるので、ダウンロードする必要はないでしょう。

となると、もうお手上げ。いよいよ八方塞がりになってきました。

3モードの罠

前述の通り、このFDドライブで私の手持ちFDは読めました。まったく普通に。
知り合いから持ち込まれたFDだけが読めない。
この違いは手掛かりになるのか。

知り合いの話によれば、このFDはおそらく1997年頃に使っていたものだとか。
当時はWindows95だったんじゃないか。であれば気になってくるのが「3モード」って奴です。

といっても1997年当時の私はMac専科(OS8がリリースされた年ですね)。Macは2DDと2HD(1.44MB)の二種類のみ。PC-9800シリーズなどで1.23MBフォーマットというものがあったことを今回初めて知りました。

余談:当時私がメインで使っていた外部記憶媒体はMOでしたね。その前はSyQuestのリムーバブルHDD。Jazは知りません。10MB程度のデータだとCD-Rじゃ勿体ないんで、分割圧縮してFDで送付したもんですが、分割ファイルの途中がメディア不良で解凍できないみたいなことも何度かありました。

件の「私の手持ちFDは読めました」は1.44MBの2HD。持込のFDはもしかしたら、同じ2HDでも1.23MBフォーマットかもしれない。

ここまでのまとめと推理。

  1. 海賊版FDドライブは3モードに対応していない可能性がある。
  2. 通販サイトで好意的に評価しているユーザもたまたま1.44MBのFDしか持ってないから?
  3. 知り合いのFDについていえば、3モード対応ドライブがあれば解決できるかもしれない。
  4. 2000年以前にPCで使っていたFDが、ディスクエラーではなく「フォーマットしますか?」というメッセージを返す場合、FDドライブが3モードに対応していないという疑い。
  5. それが1枚だけでなく数枚立て続けだと、より疑わしい。

もしかしたら結果的に海賊版でも3モードに対応している品もあるかもしれませんが、考慮に値しないでしょう。敢えてリンクは貼りませんが、本稿をアップした2024年5月現在もAmazonで海賊版FDドライブが平然と売られていることが画像などから確認できます。価格こそ比較的安めではありますがそれでも二千円~数千円。倫理的はもちろんのこと経済的にも手を出す価値はありません。所詮海賊版なので1.44MBのFDすら安定して読めるかどうか……



それらの中には、良心的?にも「2モード対応フロッピーディスクドライブです。」と説明しているものもあれば、特にその説明はなく商品写真で小さくMade in Chinaと読めたので判明したものもあったりで、なんかもう見てて辟易しました。もし知らずに買っちゃったとして、間違ってもTEACにサポートを求めないでください。

とはいえ、例えばI-O DATAのこちらはMADE IN MALAYSIAと読み取れますが、9,800円は……なかなかのもんだな。

最初からハードオフ行っときゃ良かったんや

そんなこんなで。
能書きはさておき、何も進展してないのにこのまま知り合いに戻すのはどこか後ろめたい。かといって更に9,800円のFDドライブ買えとも言えません。この時点では、買って間違いなくFDが読めるという確証もないし。

ということで近所のハードオフに行ってみました。
普段はあまりジャンクのカゴを漁ったりしないのですが、以前FDドライブが転がっていたのを見かけた記憶があったので。もしかしたらマレーシア製のやつがあるかもという期待で。

果たして店に行ってみたら、IBM製とNEC製があり、いずれもTEACのFD-05PUBで、背面のMADE IN MALAYSIAをしっかり確認。よっしゃ~
黒で無骨なIBM製ではなくカラフルなNEC製を買いました。
これでダメなら本当の本当にお手上げ。



こういうカラーはiMacの流行に影響されたのでしょうか。時代性を感じます。
価格は税込330円。3モード対応は多分大丈夫だろうけど、ジャンク品ゆえ動作のギャンブル感も伴いますが、330円なら負けても痛くはないでしょう。



ともあれ、帰宅するとおもむろにPCに接続。FDを入れると、すんなり開きました。
やっぱり原因は海賊版FDドライブだったと見做すしかありません。
あとはもう淡々とFDの中身をHDDにコピー。そりゃ1997年のFDなので、時々ファイルが壊れていたりFD自体が読めなかったりもあったのですが、概ねコピー出来たので一件落着。

備考リンク:
TEAC公式サイトの製品情報(WebArchive)
USB FDD ユーザーズマニュアル(PDF) ※buffalo.jpより
ハードオフで3モードフロッピーディスクドライブを買ってきた!(にゃんたさん)

ちなみに、デバイス マネージャー → フロッピー ディスク ドライブ を参照すると、


海賊版FDドライブ(画像上)…… TEAC USB UF000x USB Device
NEC製FDドライブ(画像下)…… TEAC FD-05PUB USB Device

以上はあくまでも一例なので、型番の種類はもっとあるかもしれないし、上の型番と適合したからといって動作の可否を裏付けるものではないかもしれません。
また、FDが読めない場合には他の原因(メディア損傷など)も考えられるので、一事が万事ハードオフに行きゃ解決するということでもありません。

3モードに対応してないとしても1.23MBフォーマットのFDを使わなければ原理的には問題ないはずですが、ここで改めて一言申せば、大前提として海賊版はダメ絶対。です。
倫理的はもとより、出所が信頼できないのだから動作も信頼できません。ましてやフロッピーは繊細なメディア。
もしかしたら1.23MBこそ日本のガラパゴス的フォーマットで、世界的にはニッチなのかもしれませんが、それとこれとは別。

諸々そこんとこお願いします。

かく言う私だって今回まで何も知らなかったわけで。
もし同じ立場であれば特に調べも疑いもせず安価な海賊版に手を出していたかもしれません。
あ、でもやっぱなんも考えずハードオフに漁りに行くかな。

今日の一言:外れても痛くない程度に、外れても泣かない程度に、それがジャンクとのつきあい

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