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いやな予感はしていたのだが、予感も、目視できるほど具体的なものになると笑えてくる。
教員棟は何か巨大な妖気でぐにゃぐにゃしていた。
「やぁやぁやぁ」
無防備に現れたのは、鳳凰院鬼月本人だった。
黒く黒く長い髪。
光すら抜けだせない、この色はそんな重力を思わせる。
威厳や堅苦しさなどつゆとも見せず、まず焼き芋をそしゃくしながらしゃべる辺りがふざけている。
(ていうか、わけーなこの人…)
そしておそらく傍らによりそう灰色の少女は灰寺ホゥノ、だって灰色だから。
彼女の少しウェーブがかった髪は耳の辺りで切りそろえられて、その色はアラセに、少年の頃初めて火を扱ったときを思いださせた。
「よくきたね、歩きながら話そうよ、ん?ん?なんで顔中べったべたなの?なんかエロいことしてた?わっかいなー」
「はぁ…どうも…」
「この子、灰寺ホゥノ、初めてでしょ?はい握手!」
「あ、よろしくお願いします」
少女の氷のような瞳は、アラセに一瞥すらむけない。アラセの右手は虚しくワキワキする。
「あの…」
「黙れカス、はらわたのジュースを鼻から飲まされたいか?」
ピッキーン
「ごめんねごめんねアラセ君、この子テレ屋なのよー、はいお詫びのおいもさん!」
モガモガ
・・・・・・。
会議室には既に3人の先客がいた。
そのうち2人の顔は、世情に疎いアラセでも知っている。
海鼠輪七色(このわなないろ)、ネブルアシアが世界に向けて発信する伝説的アイドルグループ「ゴッドフィンガー」のリーダー。
彼女達が世界ツアーを行うたびに大量の難民、遭難行方不明者を創出し、家庭や仕事を放棄する者が後を絶たない。内戦地帯では彼女の歌声を妨げぬために銃声が止み、時の大統領は彼女を批判して凶弾に倒れた。その影響力はまさに神の指。
長谷川トピア、人類初の機械生命。彼女が世界経済に与えるショックを予測することは不可能だろう。
いずれ彼女の子供達が世界に向けて放たれたとき、どれだけの労働者が職を失い、どれだけの家庭がセックスレスになるのか、どれだけの人間がその意味を失うのか。
現在、ネブルアシアにおける最大の核弾頭。その価値は未知数。
それはあまりにも予期せぬ対面。
なにを隠そう、アラセ自身がゴッドフィンガーの大ファンである。あの艶やかなくちびるを思い、何度恥ずかしい性の遊戯にふけったものか。
その白い指、歌にのって流れるような瑠璃色の髪。アラセの心拍数は跳ね上がっていた、のだが
「ああああああああ!!!!うるさいなぁぁあああ!!!!!もおおおおおおお!!!!!」
バンっと教室中をしびれさせる衝撃。
「やめてよ!!もうイヤなの!!!私を一人にしてよっ!!!消えてよもう!!」
バンバンバン、がっしゃーん
「あ…あの…」
「ん?ん?見なかったことにしておいたほうがいいよアラセ君!」
「で…でも…」
「ハロートピア!ご機嫌いかが?」
「…………いいわけがない。」
長谷川トピアは無表情で窓の外を見ている。まったくまばたきをせずに。
「あらあら、相変わらず冷たいわねぇ、ほらほらアラセ君、あのキラキラしてる子が近藤ウーテ、フルネームで呼ぶと発砲してくるから注意してね。」
といいつつ、鬼月はホログラムディスプレイの大群に囲まれた少女を指差す。
その金髪の少女はけだるげに机の上に脚を投出し、ポテチをコーラで流しこんでおくびをした。
近藤ウーテ、全世界最大のオンラインゲーム、「デスブリンガー」の製作者兼ゲームマスター。
あらゆるシステムを包括的に網羅したこのゲームの中では独自の経済が発達、実社会の貨幣とインタラクティブに連関しているだけでなく、最大の特徴はゲームアイテムの分子データをダウンロードできること。
このデータを分子キャスターにひっかけると、原料の確保さえ十分なら、世界中のあらゆる珍品を家の中で手に入れることができる。
こうして世界から通信販売が死んだ。
(ほっそい子だなぁ…)
「ていうか…」
「ん?ん?なになにアラセ君?」
「全員キラー7ですよね」
その時だった。
室内を震わす振動、騒音の大群。
空を覆いつくす巨大な軍用ヘリが、アリのようにひしめきあって進軍する。
ここにくる、とアラセは思った。
散在する紫色の雲は、あわれ綿菓子のように食いちぎられて、地獄のアリは学園の空を黒く血塗り、さながら終末を現すレリーフ画を体現した。
「きたわね……モリア…」
「へ?」
(まさかまた増えるのか…!?)
・・・・・・。
痴愚神モリア
犯罪の王、ネブルアシア最大の恥部。
わずか10歳にして地下世界を掌握したこの天才は、既存のあらゆる法秩序に戦いを挑んだ。
犯罪を奨励し、犯罪者のための教育機関を作り、犯罪者のための財団を設立した彼女の、最も恐るべき偉大な功績は、服役者の懲役に値段をつけて買ったことである。
服役してもそれに勝る報酬が約束される。わずかでも食い詰め、わずかでも先の見えない人間は迷わずその道を踏み外すことを選んだ。
「モリア…ってあのモリアですか!?」
「そうよー、あれあれ?なんで知らないの?正真正銘あなたのクラスメートよ」
教員棟を揺らす激震、迫りくる軍靴の音。アラセはつばを飲みこむ筋肉がうまく動かず、何度となく咳きこんだ。
連れてこられた彼女は大勢の軍人に囲まれ…いや、彼女はこの軍隊をすら呑みこんでいるように思われる。圧倒的な存在感。仰々しい手錠は、彼女にあって美しい装身具に過ぎない。
日ごろ感じていた身の安全、保障がベリベリと剥がれていく。この空間ではいつでも人が死にうるだろう。それも圧倒的な無意味さを伴って。
「フハハハハ、これはこれは鳳凰院殿、アナタせいでランチを食い損ねたぞ!今日は月に一度の肉料理だというのに」
「あらあらモリア、ひさしぶりね。代わりにおいもさんあげる」
身体はまるで大きくない。むしろ病身の令嬢。黒い長髪をオールバックに撫でつけて、彼女に向けられたおびただしい銃口はさながら鋼鉄の後光。
あんな小さな手で、いったいいくつの罪を犯してきたのか。あの小さな手に…手に…手に……
手錠が、ない…
周囲にいた軍人がバタバタとヒザから崩れ落ちていく。彼女は悠然と、両腕のタクトを振るう。
「今この空間だけでどれだけの犯罪行為が犯せるかわかるかね鳳凰院?このワタシを自由にするなよ!」
刹那、灰色の髪が銃弾のように踊る。その手には肉食獣の牙を思わせる巨大なナイフ。
「答えはゼロだ、死体に罪は犯せない」
「フハハハハ!久しぶりだな灰寺君!」
金属と金属が悲鳴をあげ、火花の血飛沫を飛ばす。弾き飛ばされたホゥノは反転して着地し、2撃に備えた。
「こらこらこらっ!やめなさいホゥノ!スティ!」
「…!?…し、師匠?」
「ホラホラ、あなた達もいつまで寝てるの!?仕事終わったならとっとと帰りなさいこの給料泥棒!!」
容赦のない鬼月の一声で、重装備の軍人達は困惑しながらもトボトボと引きさがっていった。
ホゥノは歯噛みしてモリアを見つめる。
「フハハ、私を殺したいかね灰寺君。犯罪は常に歓迎するよ、たとえそれが私の死によって成されることでも!!」
その時だった。
眼窩が出血したように、空間が赤くたわみ、視界の焦点がつかなくなる。室内の壁が、生物の腸管粘膜を思わせるほどに赤みを帯びてドクドクと脈打つ。巨大な、そしてあまりにも異質なパルシオンの力場。
(もしかしてまだ増えるのか…!?)
・・・・・・。
「くだらん茶番だな鬼月…こんなものを見せるために妾を呼んだのか?」
肉質の壁の中から現れたのは黄色い和紙のような髪をした少女。着物に身を包み、狐のような房状の尻尾が生えている。
しっぽ!?
「彼女は百舌姫万灯火(もずひめまとび)、大丈夫よー、とってくったりなんかしないから」
(ていうか…人間なのか…?)
「たわけ小僧、妾を貴様のような下郎と同等にくくるなよ」
「うぇ!?」
「あらあら、だめよだめよアラセ君、彼女達はずーと昔からパルシオンをてなずけてきた一族だからねー。えっちぃこと考えると簡単にバレちゃうわよー!」
彼女はバシバシとアラセの背中をたたく。
「…………おいミス・キヅキ、どうでもいいがこいつをなんとかしてくれないか?」
抑揚のないトピアの声、その先には海鼠輪七色がうずくまっている。
「みんな殺してやる…みんな殺して…殺して殺して殺して…!!!!」
ばんばん、がっしゃーん
「いいのよトピア、ソットしておきなさい、全員そろったわね!」
全員、そう、ここにいる6人全員、キラー7と呼ばれる1−Aの特待生である。
「全員?ふざけるなよ、リラがいないジャナイカ、キヅキ」
「うぬぼれないのウーテ、あの子は別」
「チッ、またアイツだけ特別扱いカヨ、ファック」
ゲシン、と机を蹴りつつフーセンガムを膨らませる。ぱんつが丸見えである。
「そうリラは特別、あの子は正直私でも怖くて手に負えない」
悠然とぐるりを見渡す鬼月。
「それぐらい別格なの。でもだからといって、ここにいる全員が未来のネブルアシアを担う優秀な人材であることに疑いはない、これはこの宇宙で数少ない事実です」
「フハハ、くだらん、私の価値は私が決める」
「キサマ…!!」
「…とにかく、今日集まってもらったのは他でもない。それほど優秀であるはずのあなた達が、悲しいかなそろいもそろってだめなところが一つあるのよ」
彼女は腕を組み、こまったもんだと室内を歩く。
「天才の傲慢?いえいえ、これはもうここまでくると先天的な欠損障害ね。ゆえに今からそれを治療します」
ピクリ、と万灯火の眉が反応する。
「聞き捨てならんな…人間に教えられることなどなにもないわ」
「…………ボクに欠陥だと?ありえないな」
「もったいぶらずにサッサトいえ鬼月!2秒で修正してヤル」
「あなた達のダメダメなところ、それは…」
「それは…?」これはアラセ。
ゴクリッ
「保健体育よ処女共!!」
・・・・・・。
海鼠輪七色(このわなないろ):アイドル、瑠璃色の髪、情緒不安定
近藤ウーテ:ゲーマー、プログラマー、虚弱、くるぶしまで伸びる金髪
痴愚神モリア(ちぐしんもりあ):犯罪者、腰までの黒髪、オールバック
灰寺ホゥノ:暗殺者、ウェーブがかった灰色の髪を耳辺りでそろえる
長谷川トピア:人工生命、ボクっ娘、おかっぱ
百舌姫万灯火(もずひめまとび):妖怪、しっぽ、黄色い髪、前髪で眉毛が見えない、着物
アラセ:主人公
以上7名、圧縮空間内において、保健体育の強化合宿を命ずる。
「性的にわからないことはこの2人に聞いてね」
といって2人の美女を講師として招きいれると、鬼月はそそくさと会議室をでていった。
「あ…圧縮空間ダト…!?」
圧縮空間、対象の空間を竜の卵と呼ばれる特殊フィールドにたたきこみ、極限の重力と質量の中で、内部の存在構成を代替物に変換しながら再構築することにより、極小のミニチュアを作りだす。
これにより圧縮変換された人々は、外部の人間に対して100万倍もの相対的な時間尺度を獲得する。すなわち空間内の人物が100万日過ごしても、外の世界の人々には1日しか経過していないことになる…。
(なんて頭の悪い…)
見れば窓の外がグニャグニャと紫色に歪んでいく。
当然関係者以外の人払いは済んでいるのだろう。この空間からの脱出は不可能だといわれているのだから。
「期限はいつまでだ?」とモリア。
「私たちは承っておりません。」
二人の講師の片割れが静かに答える。彼女は黒い髪を左右に結って、メガネの奥には知性を湛えている。
「わかるようにしゃべってくれぬか?人間の言語は低級すぎる」
「セックスに興じろということだよ子狐君。ホゥノ君キミもしゃべりたまえ、私一人に司会を任せる気かね?」
「フン、知ったことか」
「皆様の遺伝子情報は大変価値の高いものとなっております。その存続、更なる進化はネブルアシアの特務でございます」
もう一人の講師がいった。落ち着いた物腰に鋭い目スジ。紫色の長い髪は胸元にたれている。
「それゆえ、皆様にはセックスへの理解を深めていただくと共に、この強化合宿を期に…」
「だからまずそのせっくすというのはなんなのじゃ!!」
万灯火の声が室内に響く。
そう、ココに集められた6人は、その膨大な能力と引換えに、性に対してまったく無頓着な人生を送ってきたのであった。
・・・・・・。
「見せたほうが早いだろう」
ホゥノはそういうと、重量のありそうなベルトのバックルをバチリとはずした。
「フハハ、ここでするのかね?それはいい!」
「貴様は黙ってろ、クソッタレ!」
彼女の服は装備の重みで床に落ちる。薄暗い教室に、その肌の白さがハッキリと際立つ。
「早くいれろ」
彼女は長机の冷たさを尻に感じ、怖じることなく足を広げる。
アラセが講師のほうを見やると、2人は澄ました顔でノータッチを決めこんでいる。
ということはこの空間でおそらく一番下っ端のアラセにとって、断わる道理などなにもないのであった。
(なんか悪いことしてるような気がする)
ぷにゅ
「勘違いするなよ」
「へ?」
「師匠の命令だからだ」
ミチン
「………………ぃっ!!!!」
ホゥノは自ら腰を浮かすと、切腹者のようにあてがわれたアラセの肉物を引きいれる。
未発達の粘膜がもつ基本的な粘り気しかないホゥノの膣は、当然のようにアラセの肉物に絡みつき、凝縮し、その進入を阻害しようとする。アラセのち○こにも鈴口から縦に裂けるかと錯覚するような圧力がかかった。
「いったあああぁああ!あああぁ!!っっいいぁ!!!」
当たり前である。
あわてて引きぬこうとしたアラセだが、ホゥノの強靭な両腕で押さえつけられる。
「ふやあぁっあああぅあ!!ぃぃったああああああいいゃあ!!」
アラセの肉物は押すのも引くのも、強迫的な摩擦力でにっちもさっちもいかなくなり、かといって留まれば殺人的な痛覚の電撃がホゥノに流れる。彼女はのたうち、悲鳴をあげてバタバタと足をゆらす。
「痛いイタイイタイイタイイタイ!!!!ぬいて!ぬいてぇええ!」
アラセはすばやく決断すると、ホゥノの膣口に手をあてがい、辛抱強くかつ手早く己の肉物を抜きにかかる。
「ぁああっぁあ、ぬーーーかーないでーーー!!!!」
丁度動物を手術するのに似て、こちらは彼らのためを思ってやっているのに向こうは全力で抵抗する、そんな感じ。
「痛いバカ!!痛い痛いイタイイタイ!!!!やーーーめぇぇえてーーバカー!!!!」
ズポンっ
アラセの肉物は驚くほどの速度で収縮し、あからさまにこそげとってきた粘膜の残滓が、赤い色味をもってニチャニチャとぬめっていた。
メガネの講師が前に進みでると、遠慮気にコホンと咳払いをする。
「今のが悪い例です」
室内全員ドン引きだった。
・・・・・・。
「と…ととと…とんでもない話じゃ!!」
真っ先にとり乱したのは百舌姫万灯火、その横でウーテが蒼白な顔をし、コーラを飲む手が止まっている。
トピアは輪をかけて無表情になり、海鼠輪七色は逆に落ち着きをとりもどしていた。
「すばらしい!実にすばらしい!」
しきりに両手をたたいているのは痴愚神モリア。ホゥノはしくしくと泣きながら講師の2人に慰められている。
「実にスリリングだった!胸がイバラに締付けられるようだ!今の一瞬のためだけにでもここに着た価値がある!!」
どうやらそれは心からの賛辞のようである。
「他にする者はいるかね?いない?よろしい、では私がもらっていこう」
モリアはアラセの手を引きながら会議室をぬけでる。その手のあまりの小ささにアラセはゾクリとする。
教員棟を歩くモリアの姿は、お父さん見せたいものがあるから、とでもいいたげな少女のようで、きれいな黒髪がよく動く。
「どこがいい?もう少し落ち着いたところがいいな」
そういいながら屈託なく笑う彼女に、アラセは、呪いのように染付いた魔王のイメージが崩れていくのを感じた。
ついたのは教員棟の端っこに内接する保健室。
モリアはイタズラをはばかるように扉を開け、クスクス笑いながら人差し指をくちびるにあてる。
いまさらながらに、教員棟は物音一つしなかった。
「改めて、初めましてアラセ君、挨拶が遅れたね」
「いえいえ、こちらこそ初めまして」
モリアは繋いでいた左手に右手を添えて、振り子のようにゆさぶりながらニコニコしている。
「実にゾクゾクするな!こんな気分は久しぶりなのだ、ああ座ろう、早く!座って話そう!」
彼女は両足で踏み切って、白いシーツのベッドに沈み込むと、手を引っ張ってワザとアラセの体勢を崩そうとする。彼女は腹を抱えて笑いだすと、背中をさするアラセの腕をとり、胸の中でまた笑った。
「ああだめだ、実はだめなのだこういうのわ…、ふはは…、すごい恥ずかしい」
「へ?」
「なにしろ異性の手を握るのも初めてなのだよ私は…ふはは…キミを見たときから震えが止まらないのだ」
「あんな大立ち回りしてたのに?」
「い…いわないでくれ…」
そういって見上げる彼女の顔を見た瞬間、ヒューズがパッカーンとトンだアラセはモリアにのしかかった。
ちゅっ…、ちゅぷ…、くぷっ…ん
くちびるを話すと、アラセとモリアはわずかに見つめあい、やはりまたモリアが笑いだした。
「くは…すまない…ははは…ほんとにすまない…くくくは…」
その声を聞くだけで、なんだか知らないがアラセの肉物は屹立する。
「こ…ふはは、これ…これ脱がしてくれないか?…ふふふは…」
彼女の背中を見ると、なるほどなにやらベルトのようなものが複雑に入り乱れている。これは一種の拘束具なのだ。
ベルトを一つ一つはずす度に彼女の肌があらわになる。アラセもあわせて服を脱ぐ。
彼女はまた、発作のように時折笑う。
むらむらとイタズラ心が沸いてきたアラセは、彼女の腰に指を這わせてつまんだりする。
モリアは予想通りに飛び跳ね、くねり、アラセの腕の間でコロコロと逃げ回った。
その胸に舌を滑らせると、わき腹に銃弾の傷跡が残っていた。アラセの頭に添わせたモリアの指に力が入る。
「ん……ふぅ、……くっ」
彼女の肌を舌でくだり、ひかがみをもって足をあげると、そこにも縫ったような跡がある。
「これは…?」
「それは…その、公園の土山で滑ったときに…勢いあまって…」
アラセはその傷をふくむように、ももの裏にくちびるをあてがう。
「ふぁ…」
彼女の果肉はトロトロと蜜を発し、それを見られていることの羞恥がすねたように顔を背けさせた。
アラセは彼女の肌に残る大小の傷の由来をすべて聞いて周り、そのつど舌でなぞっていった。
ちゅぷ……
「ん……ぁっ」
アラセはモリアの入口付近でゆっくりと前後しながら、徐々に進入の度合いを強めていく。
「ふぅっ、ぅ…もうちょっと……奥まで大丈夫だ…」
きゅぅっ…きゅっぷ、ぷ…
「痛くないかな?」
「痛い?…ふふ、しびれそうだよアラセ君……」
いいながら差しだされたくちびるを吸い、リズムを加えたり、休んだりする。
「ふっ…ぁっ、ぁっ、ふぁ…」
にゅく…にゅ、…にゅぷ、にゅこっにゅこっ
「ぁ…アラセ…くん……今の…」
にゅこっ、にゅこっ、にゅこっ
「ぁあ、それ……お願ぃ…ふあ、」
アラセは腰を止め、接面をこするのでなく、接面越しに微弱な振動を送るようにする。
摩擦では刺激が強すぎるのだろう、モリアは悩ましげに首を反らしたり、つま先を伸ばしたりして、神経のいき所を探している。
「ん…ふぅう……んっ、んっ、んっ、く……ぁはあ…」
一度抜き、汗ばんだ彼女の肌を舐めとりながら指を這わす。モリアは、自身の指を果肉にあてがい、身体をそらしながら刺激を与え続ける。
2人して時間を忘れ、目の前の行為に没頭する。間が空けば挿入し、愛撫し、また抜く。
休息し、再び試み、くちびるを吸いながらだ液を交換する。ノドがひりつき、思考が鈍る。わずかでも彼女のにおいを嗅ぎ損ねるとそれだけで発狂しそうなほど狂おしかった。
「ん…んん…?ぅ…ぅん」
押寄せる快感は、しかしすぐに霧のように立消えてしまう。実体のない苛立ちに、彼女の視野がどんどん偏向してゆくのが目に見えてわかる。
「…っ、…うまくいかない」
アラセはあせらずに、開放へのヒントだけを提供していく。彼女はいま、生まれて初めて性の峠を越えようとしているのだ。
「ん……ふぅっ、……ふぁ…、…くっん!」
彼女は両腕の力をこめてアラセの腰にしがみつく。アラセはひざがしらで果肉をこする。
ちゅく、ちゅっぷ、ちゃぷ、ちゅっちゅっぷ、
彼女の両腕の力が増し、自然座位の体勢となって何度目かの挿入を開始する。荒げた息が、蜜の香りとなってアラセの鼻にかかる。
「ん!ぁんっ、ふっ、く…ぁは!」
恐れるように逃げる腰をつかみ、半ば強引に彼女の膣に摩擦を加える。アラセをつかむ力に両足が加わる。押付けられた額の間に、彼女の髪の感触がある。
「あっ!?あっ?、あくっ、ああぁ!!」
彼女は腰を引きとびのく、アラセはそれを押しとどめる。その手の中で小さな腰がもがく。
「いやっ!あ…!!やぁ!!やだ!それはダメ!!!」
2人は潰れるほどに密着する。暴力を振るうときに使う筋肉で彼女を抱きとめる。
「ああああ!!あっっか、やぁああっ!!」
どびゅん、ぎゅぷ、びゅくん
彼女の膣が収縮し、蠕動を繰返す。その爪がアラセの背に食いこむ。ぎゅうぎゅうと、押しこまなければ己が崩壊するかのような力の流れが、彼女の意思を不確かなものにする。
とくん、とくん、とくんっ
「…び………………びっくりした…ぁぅ」
最後に一度跳ねるように膣口を閉め、頭をたらす。
くたり
その後6時間にも渡ってベットの上で格闘した2人は、夕食の時間だと呼びにきた講師に対して、しぶしぶと行為を中断した。様子を見にきたウーテと万灯火が、えげつないほどにいやらしい2人の姿を見て走って逃げた。
・・・・・・。
夕食も終わり、はずまない話もそこそこ、アラセはモリアに手を引かれて割り当てられた部屋にしけこんだ。
彼女は敏感すぎる角度にも果敢に挑戦し、失敗を笑っては、貪欲に快楽をてなずけていった。
「この格好が一番気持ちがいい。」
彼女は馬乗りになってアラセにまたがり、互いの胸を密着させる。
長い髪がアラセの顔を完全に包みこみ、外界を遮断する。お互いにお互いの顔しか見えない状態でたわいもないことをささやきながら時が過ぎる。
「なあアラセ君、いいことを思いついてしまったのだが」
「ん?」
モリアの笑顔はイタズラ心に満ち満ちて、薄暗い電灯が悪意を助長する。彼女の長いとはいえない人生、散々罪に濡れてきた親指でアラセのほおをなぞると、その指をパチリと鳴らした。
「お呼びでしょうか?」
部屋の隅の影がひときわ暗くなり、それが人の輪郭を伴って音を発する。影のような少女が2人、ヒザをついて頭をたれていた。
「紹介しよう、左のツヤツヤした黒髪のほうがベルス、右の森の奥地のような髪をしたほうがマディ、私の腹心だ。」
「はぁ…」
どうやら彼女の権力には監獄や時空の断絶は関係ないようである。
「オヤ?フフン、この子はもう自分がなにをされるのかわかっているようだね…」
むぎゅりとつかまれたアラセの肉身は、水揚げされた魚貝のようにビクビクと跳ね回っている。
「よく働いてくれるかわいい娘達なのでな、労をねぎらってやることも必要だろう?」
モリアはにゅこにゅこと淫らに陰茎をさすりながら、舌先からとろりとしただ液をたらす。
2人の少女はさそわれるように、音もなく擦寄ってヒザを折る。
痴愚神モリア、さっきまで処女だった少女は、もう既に性的世界の開拓事業にのりだしていた。
「いいの?」
気恥ずかしさからでたアラセの言葉は、すぐに愚問であると知る。
少女の顔はすでに紅潮し、瞳がわずかに潤んでいる。この2人の感情はモリアと連結しているのだ。
モリアがしたいと思ったときには、2人はすでに成し終わっている。
「失礼します…。」
マディと呼ばれた少女が、過剰な恐れを抱きながらアラセの肉物にくちびるをあてがう。そんなにありがたがるほど、ご利益のある棒ではないのだが。
ちゅく…ちゅぷく…
ベルスと呼ばれた少女は細心の注意を払ってアラセの胸板に指の腹を這わせる。
恍惚とした表情は、少女の身体全体から淫靡な蒸気を発しているように思える。少女達は身体に張りつくような、ピッチリとした黒のショートパンツは、付け根に手をあてるだけで爪の先がわずかに潤む。
「はぁ…ぁくぅ……」
くったりと首筋にすがりつくベルスを、その細身の腰をもって支えると、限界を超えたアラセの肉物が己のたけをぶちまける。
噴出した肉汁は、マディの小さなあご、首筋、薄い鎖骨などを満遍なく陵辱し、彼女は恐る恐るそれを掬って乳首を愛撫する。モリアは眼を細めてマディを抱きかかえ、同じくアラセの肉汁を指で掬ってマディの股間をなぞりあげた。
「ぅあっ…ぁ、あぁ、…」
切なげにそりかえるマディの衣服を、歯と指先で解いてゆくモリア。アラセはそれに習ってベルスの制服を脱がせようとしたが勝手がつかめず、それを察したベルスの指先に教えられて彼女の肌をあらわにする。
彼女はツンと張った乳首を歯でこすると、ノドの奥を搾るように呻いた。
アラセ達の部屋は敷布団が一組だけ配給されただけの、なにもない部屋である。窓の外は歪んだ次元の壁、冷たいリノリウムはまだ新しい臭気を残している。おそらくはこの合宿のために新たに整備されたのだろう。
「ぅああ、…はっく、ぅ…ああん!」
アラセはベルスの腰をもって立たせると、不安定な体勢のまま肉物を埋没させる。支えを求めるベルスは自然前屈の体勢となって、両手を床に着いた。
じゅぷぷ…じゅっぷ、じゅぷ、じゅっじゅっく、じゅっぷ…
「はぅ!あっ、あっ…はぁう!…」
ちゅっこ、ちゅっこ、ちゅっぷ…ぢゅぷん
アラセはぬらぬらと照りかえる肉物を抜きだすと、困惑するベルスの顔に寄せていく。察しの良い彼女は眼を閉じ、ゆっくりと口を開いてふるふると舌を突きだす。肉汁は丁寧に搾りだされ、ベルスの口腔を満たしていく。
「ベルス!呑むなよ!呑んだらお仕置きだ」
モリアが、マディの肉唇を蹂躙しながら命令する。アラセがベルスの舌の根で鈴口をこすっていると、彼女の瞳に愉悦の灯火が宿る。
ぢゅぷぅ…ぢゅくぷ、ぢゅっぷ、ぢゅ…ぢゅぷんぢゅぷどぷ…
アラセはそのまま再度ベルスの口壁を犯し、彼女のすぼめたくちびるで、搾るように射精した。
彼女は健気にいいつけを遵守し、供給不足の酸素のせいで、脳が怠惰に思考を閉塞させてゆく。
「んぁ…んぶ…ん、ぐぅ…」
アラセはノドの奥で苦悶を搾りだす彼女の、けだるく開けたふとももを掴んで、果肉を犯す。そうさせるのは、手酷い仕打ちに酩酊したようなベルスの表情だろう。その顔は宗教的な儀礼に従事する神官を思わせる。
アラセの肉物は連続した射精の痺れで感覚が曇り、肉の摩擦はほとんど感じなかったが、なによりも退廃的な、非日常的空気が彼の精神を高揚させた。
「ぁがぅ…んん、んぐ…ぐぅ…」
どびゅ、どびゅん…
アラセが肉物を引きだすと、ベルスの魔女のようなくちびるに射精する。
「ベルス、こっちにおいで」
モリアが指示した先にはマディのお○んこがあらわに広げられていた。彼女のは膜襞は穴が二つ穿たれていて、真ん中の渡しをモリアが指で引っ張っている。v
ベルスは口腔に溜めただ液と精液の流動物を、とろとろとマディの粘膜に注いでいく。発酵した処女のにおい。次いでアラセが呼ばれ、その肉物はさしたる抵抗もなくマディの膣肉に飲み込まれる。
「ホラホラこぼしてはダメだぞアラセ君。」
じゅぷっ、じゅぷじゅ、じゅぶ…どくどく
天井を向いたマディの膣口を、ゆっくり、ゆっくりと上下にこする。じゅるじゅるとこぼれる汁の塊をベルスが舌先で掬っている。その舌がマディの肛門を広げるたびに、膣の肉が凝縮してアラセを搾る。
「ぅあ…ぁっ、あっ、ぁっぅ……んっく…」
どびゅ、どぷゅん
2度、3度と送られる精液。ぬらりとした肉物をモリアが手で拭取り、マディの果肉にこすりつけながらさらに己のだ液を足した。
「ぁ…ぁう…」
ベルスが愛しげに相方の膣唇をくちびるでふさぐ。徐々に傾斜をつけた膣道から、濁りきった流動物がベルスの中に流れていく。彼女の口腔はすぐに満たされ、あごをそらせて懸命にこぼさぬよう努めていた。
「いいわ、全部…ゆっくりと呑みなさいベルス…」
モリアの口調は角がとれて、誘惑する悪魔の口調になっている。ベルスはいわれたとおりに、ゆっくりと、吐き気をこらえるように性の塊を嚥下していった。
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