は行
- 場 【ば】
- 賭場のこと。「場が立つ」とは博奕ができる状態を意味する。
- 媒酌人 【ばいしゃくにん】
- 取持人、仲介人の補佐を行う役柄。 取持人、仲介人の子分であることが多い。
- ハイ出し 【はいだし】
- 恐喝や強請(ゆすり)のこと。ハイダシ。「ハイ出しをかける」のように用いる。
- 吐いた唾は呑めぬ 【はいたつばはのめぬ】
- 一度口にした言葉は取り消すことができない、という意味の諺。
- 「そうか、われらも吐いた唾のまんとけや。わかったら、はよイね」 岩井信一
- 博徒 【ばくと】
- 博奕打ち、博打うち。賭博で生計を立てているやくざのこと。本来はヤクザとは博徒を指す言葉だった。
- ちなみに広島抗争に関わったやくざ組織は、テキヤである村上組や愚連隊である北陽同志会を除き、ほとんどすべての組織が博徒である。
- 小原組や打越会はよく愚連隊あがりと言われるが、前身はどうあれ賭場を開帳しているので警察の資料ではちゃんと博徒に分類されている。
- 「これからは博徒大友組じゃけん、仲良うしてつかいや、のう」 大友勝利
- パクられる
- 警察に捕まること。
- 「岩井が応援に行ってパクられてしもうた」 相原重雄
- ハジキ
- 拳銃のこと。弾をはじくことに由来する。主に関東で使われる隠語。
- バシタ
- 女房のこと。
- 法被 【はっぴ】
- 昭和20年代当時、呉・広島のやくざ社会では羽二重で仕立てた法被が流行していた。背中に大きく組織名や親分の名前が入っており、現在の代紋バッチのように組員のシンボルとされた。
- 映像作品ではVシネマの『鯨道10 広島ヤクザ抗争史総完結篇 猛侠・門広』『実録 鯨道12 広島列侠伝・悪魔の大西政寛』『実録 鯨道13 広島任侠伝・美能幸三』などでその姿を見ることができる。映画『仁義なき戦い』のやくざファッションは実際には70年代当時の関西やくざを参考にしているため、法被は劇中には登場しない。
- 破門 【はもん】
- やくざの処分のひとつ。所属する組織から追放であり、その事実は全国の組織に破門回状(破門状)で知らされ、他の組織がその人間に関わった場合は破門した組織への敵対行為であると見なされるためやくざ社会からの追放処分でもある。重い処分ではあるが、本人が深く悔悟した上で折をみてそれなりの仲裁人を立てて詫びを入れ、許されれば親元に返ることもできる。関東のやくざは破門状に印刷された文字の色から、永久絶縁処分を「赤字破門」、復帰が可能な破門を「黒字破門」と言い習わしている。
- 破門状絡みのトラブルとしては、住吉連合会系の幸平一家内池田会・池田烈会長が池袋事件の引責として赤字破門になった際、九州の道仁会・古賀磯次会長が池田元会長を引き取り身内にしようとした池田烈事件が有名。この道仁会の態度は住吉連合会のみならず、関東博徒社会への挑戦と受取られ関東二十日会との抗争勃発寸前にまでなった。最終的には調停機関としての関西二十日会が真価を発揮し、道仁会が池田元会長受入を断念することで抗争は回避された。
- 番長 【ばんちょう】
- 不良集団の首領格のこと。戦後、新宿に歌舞伎町が出来始めたころの新宿駅七番線・八番線ホームにたむろする不良学生集団が存在した。このグループは「バンセンよた(七番線・八番線ホームの与太者)」、首領が「バンチョウ(番線与太の長)」と呼ばれていたことに由来している。
- 梅宮辰夫が演じる神坂弘が暴れまくる映画『不良番長』シリーズは、不良ではない番長は存在しないのだからタイトルは「馬から落馬」式の重複表現である。
ひ行
- 広島抗争 【ひろしまこうそう】
- 戦後の広島・呉で四半世紀渡り繰り広げられた暴力団抗争の総称。狭義には東映映画『仁義なき戦い 代理戦争』『仁義なき戦い 頂上作戦』で描かれた広島の地元やくざと山口組系組織の抗争である第二次広島抗争(第二次広島けん銃抗争事件、広島代理戦争、広島事件、広島戦争、広島ヤクザ戦争など様々に呼ばれている)のことを指す。広義で使われる場合は、備後地方における浅野組と篠原組の抗争、浅野組と侠道会の府中戦争、福山、三次といった地域の抗争事件も含む。
- 広島抗争という呼び名は警察ではなくマスコミによる造語のため、第三次抗争以降に勃発した共政会の内紛(血の粛清こと新井組・岩本組粛清事件──岩本組は『代理戦争』で小森のモデルになった宇部の岩本組とは別組織、広島駅新幹線ホーム乱射事件、共政会幹事長・清水組清水毅組長射殺事件、青木組絶縁事件など)を第四次抗争、第五次抗争と定義している向きも存在する。
- 第一次抗争(1946年8月〜1959年10月)……戦後の新興勢力である博徒・岡組と伝統的テキヤ・村上組が広島駅前闇市の覇権を巡り断続的に繰り広げた抗争。同時期に呉で勃発した山村組・小原組・海生組三派連合と土岡組の抗争、山村組内佐々木派・小原組と山村組内今田派・土岡組残党の抗争、山村組内佐々木派・小原組内岡崎派と小原組内門派の抗争(これら三つの事件を総称して呉けん銃事件という)と並列して語られることが多い
- 第二次抗争(1963年4月〜1964年10月)……山口組の山陽地方進出に端を発した山村組と打越会の抗争。打越会を山口組が、山村組を本多会とそれぞれ大組織が援助したことから俗に広島代理戦争と呼称される。抗争初期は山村組・山口(英)組などの連合対打越会・美能組・小原組・岡組・西友会・河井組などの連合という図式だったが、抗争後期には山村組は村上組・浜部組などと広島やくざの連合組織・共政会を発足させ、共政会対打越会連合という図式になった
- 第三次抗争(1969年10月〜1971年9月)……広島やくざの連合組織・広島共政会三代目会長の座を巡る抗争。呉における共政会樋上組と美能組・小原組の抗争(呉2丁けん銃事件)、広島における共政会と村上組・宮岡組の抗争、大阪・尾道における共政会・浅野組・千田組と十一会梶山組・侠道会・北陽同志会の抗争(大阪事件・尾道事件・府中戦争)と各所で勃発した事件の総称
- ヒンガモ 【ひんがも】
- カモのこと。くみしやすい相手の意。
ふ行
- プーヤ 【ぷーや】
- 野球賭博を商売にする人間のこと。歩ウ屋(ブウヤ、ブーヤ)。多くがダフ屋を兼ねていたため、単にダフ屋のことを指す場合もある。
- 「舐められとったらプーヤは終いで」 藤田正一
- 復員 【ぶしょくとせい】
- 博徒の世渡りのこと。この言葉から博徒のことを渡世人と呼ぶようになった。
- 無職渡世 【ぶしょくとせい】
- 博徒の世渡りのこと。この言葉から博徒のことを渡世人と呼ぶようになった。
- 府中 【ふちゅう】
- 広島県府中市(備後府中)のこと。「府中」という地名は律令制度の行政府である国衙が置かれた「国府」の別名のため、北海道と沖縄を除く日本全国に存在しているが、説明がない場合は地元と解釈できる。同じ広島県に安芸郡府中町(安芸府中)が存在するが、小さな町でありやくざが抗争を繰り広げるような都市ではない。
- ふとい
- 偉い、立派な。
- 「ええもん貰うたのぅ、そりゃスイス製の何十万もするもんで。おやじさんいう人は、ああいう腹の太いお方よ」 松永弘
へ行
- ペイ 【ぺい】
- 阿片系の麻薬・ヘロインの隠語。ペー、ペエ。白い粉末であることから中国語で「白(ペイ)」と呼ばれていたことに由来する名称。今日ではヘロ、H、白い粉、クイーンオブダウナーなどと呼ばれる。
- アヘンから抽出したモルヒネをさらに化学処理し精製することにより作られ、日本では昭和28年に施行された麻薬及び向精神薬取締法により取締対象となっている。
- ペイ中 【ぺいちゅう】
- ヘロイン中毒者。ヘロインに限らず、麻薬中毒者や薬物中毒者全般を指して使われることもある。
ほ行
- 放免祝い 【ほうめんいわい】
- 刑務所づとめをつとめあげた人間への出所祝い。
- ポルノ 【ぽるの】
- 「ポルノグラフィー」から鈴木則文が作り出した造語。今日では「児童ポルノ」などのように公文書にまで使われるようになった。
- 盆 【ぼん】
- 賭博のこと。
- 盆暗 【ぼんくら】
- チンピラのこと。漢字では「盆暗」と書き、盆に暗い=博奕に疎い半人前という意味の博徒用語だった。
- 「大友の実子とツルんどるボンクラです」 江田省三
- 「どうせそこらのボンクラじゃろ」 打本昇
- 盆ござ 【ぼんござ】
- 博奕を打つ際に使うござのこと。盆蓙または盆胡座と書く。
- 盆屋 【ぼんや】
- 賭場のこと。
- 「おう、闇屋でのしゃ上がった成金の盆屋は愛想がないのう」 上田透
- ポン 【ぽん】
- 覚せい剤の一種・メタンフェタミン系中枢神経刺激薬の隠語。現在ではシャブ、スピード、エス、冷たいの、などと呼ぶのが一般的。
- 大日本製薬の商品名「ヒロポン」の略称に由来する。ヒロポンは現在でも大日本製薬の後進である大日本住友製薬で製造されている。
- 戦中は戦略物資として運用され、特務機関・パイロットなどの軍人や軍需工場の職工に支給されていた。戦後はそれら軍需物資が民間に流出し、小説家、芸人、娼婦、受験生などの間で乱用された。無頼派の作家・織田作之助には演台でヒロポンを射ちながら講演をしたエピソードなどが残っている。
- ちなみに「覚醒剤」と書くと特定の商品名になってしまうので、「醒」はひらくのが正しい。
- 「有田、ポンは止めえいうとるんが聞けんのか」 坂井哲也
- 「モロッコ、ポンは止めろ」 稲原龍二@修羅の群れ
- ポン中 【ぽんちゅう】
- 覚せい剤中毒のこと。または覚せい剤中毒者。
- 覚せい剤取締法施行以降、覚せい剤は暴力団の有力な資金源になった。ところが「ミイラ取りがミイラになる」という諺のように、ポンの売人を仕切るやくざが好奇心から手を出してしまい、そのままポン中となってしまうことが相次いだ。『仁義の墓場』の石川力男、『私設銀座警察』の渡会菊夫、『修羅の群れ』のモロッコの辰こと出水辰雄などはそういった事実を踏まえた描写になっている。
- ポン友 【ぽんゆう】
- 親しい友人のこと。朋友の中国語読みに由来する。