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鍋の宴が続いている。

皆が皆、理性と倫理観が煮崩れしだして、性器を押付けあったり、意味もなく笑ったり、ゴキゲンなまま夢も現もよく分からなくなっていた。



「―――ッ!――っ…!!」
「ぬぅぅぅ、そんなに痛いか…どうしよ」
「力抜いてー、リリィはん」

水面に、黄色い花が咲く。リリィ・ルルクトラ。この少女の髪の毛は身体の体積よりも明らかに多い。白いノドは細く、それをふるわせる様は声がでないせいで余計に痛々しい。

パクパクと開くくちびるは真珠のように綺麗で、汚れも無く、舌と歯はとれたての林檎のように潤っている。数度の交接。擦り切れた桃肉から赤い血が流れだし、お湯にたれる。

「――――――ッ!!!…!!」
「封印だけでも解いてあげたらどうですのん?」ヨフネが横から声をかける。
「うんうん、いいかなリリィ?いいかなとはつまり射精のことだけども」
「―――!!…。……。。」

よろしくお願いします、見たいな眼。決意の眼。

この少女、地獄からの生還をミスラの背中で体験しているため、非常によくミスラになついている。しゃべれない彼女を代弁すると、もう単純に王子様だと思い込んでいる。

「本当にいいんだねリリィ?ある意味でオレという人間の塊を注ぎ込むということなんだよ?どろどろのぎっとぎとのべっとべとの、いわば肉が吐いたゲロみたいな…」
「はよしなはれ」

つねり。

「おご…!」

ビュー。びゅくく、びゅるるる。

悪魔のタン汁が注がれてゆく。ミスラはゲハゲハと下卑た顔で舌をだし、チロチロと、無垢な少女のほっぺたとなめたりなぞったり。人間的に品性の欠片もないようなやり方で少女を蹂躙、それでも少女は嫌がらない。戸惑うけれど。

びゅー、びゅる、びゅくく。

入口だけで亀頭を咥える果肉はつやつやして、大きくはないが、やわらかに伸びる。柔軟な肉。少女と正面から交合するミスラの後ろからは、シラカワヨフネが、繋がったままの肉茎を上下。もちのような指。滑らかな舌が、玉の皮をなめす。

ちゅぅ。びゅぶぶ…ぶぽ。
びゅ、びゅっぅ、びゅぼ。じゅるる。
ちゅぽ。…あも、…はむ、…ミスラはん、かわえぇ。
ちゅっ、ちゅぽ、っちゅぽ、っちゅぽ
びゅ。ぬぽん。

射精のたびに、少女は身体を震わせて眼を伏せる。口前で交差する小さな手は、恥ずかしいのか、ミスラに息がかかるのを遠慮しているのか。

びゅー…びゅぶ。

「……。…っ、」
「ちょっとだけ…奥に…」
「――ッ!!…っっっ!!!」
「あきまへんよミスラはん、…ウチの口で我慢しぃ」
「うー…」

ふぐりがきゅぅきゅぅとヨフネのくちびるに吸いこまれる。つけ根の、一番抑えてほしいところを、やわらかく包み込む感覚。それはそれで確かによいものだ。

「ふふふ、こんなんどうですのん?」
「おおお…このワザは…」
「ウチが動く?ミスラはんが動きはる?」

ヨフネはさらに十本の指とてのひらで女性器を模し、精液とローションを掬いながら肉茎を包む。もちもちと、厚みと弾力を併せ持つてのひらは彼女特有のもの。ミスラは好意に甘えて腰を振る。肉物はヨフネの擬似性器を抜け、抜けた先で先っちょが時折リリィをつつく。

ちゅぱん、ちゅぱんちゅぱっ、ん。ちゅぱんちゅぱんちゅぱん。

「こんなんもありますえ」
「ん?」

放蕩歌人は、リリィの顔をまたぐように覆いかぶさり、性器の前に雪のようなおっぱいを構える。いまにもとけだしそうな、白い白いやつ…

「ま、まさかヨフネ…こんな角度で…そんなプレイを…」

凶器的なおっぱいと、凶器的な肉物がなければ不可能な芸当。それをしてもいいよと、この娘はいう。


ちゅぷぷぷぷぷ…
「あん、ミスラはん…あっついわぁ…」
ぷじゅ、ぷじょ。ぷじゅっぷぶぽ。


さすがに無茶な体位なので、ミスラが少し斜めになったり、ヨフネがおっぱいの先端部をあてがうだけにしてみたりして、妥協案を探り、最終的に射精だけはリリィの膣に行う。変なプレイ。

肉物を抜くと、だまになった精液がボトボトと垂れる。奥の方がまだ閉じているのだろう、膣口からはあふれる精子がとろとろと湧きでている。歌姫はあわてたのか天然なのか、指で押さえて流出を阻止。その絵面、乙女にあるまじきはしたなさ。

もぞもぞと動く指。その格好。犯罪者のために咲いた花現れり。

「……っ!」
「なかなか治りまへんなぁ」
「ふむ?どれどれ、見せてみよ」

モナメテオがリリィののっかかり、うにーっとばかりに指で少女の口を押し広げる。ノド、針の刺さっていた幹部、肛門、コロコロと転がし、手で問診、だした結論は…

「当人の意志の問題じゃな」
「……っ?」
「お主、日頃から己の意思を表にださんじゃろう。普段から使ってないから身体が己の機能をわきまえておらぬ。……もっとはっちゃけねばならんの」
「はっちゃける?」
「バカーでも、アホーでもよい、普段絶対言わないようなことをこの際ぶちまけてみよ。殻を破るのじゃ」
「……っっ、っ!!」
「リリィはん、こんなんどうですえ?」

もにょもにょと耳打ちするヨフネ。真っ赤になるリリィ。

「なにいうたん?」これはミスラ。
「ふふふ、…いややわーミスラはん、もっさいこと聞かはらんと」
「ほれミスラ、手伝ってやるのじゃ」
「へ?」
「感情を出力するには肉体に入力するのが一番じゃての、ふぉふぉふぉ」
「ああなるほど…」

リリィの眼を見る。まっかっか。それでも、がんばりますから!みたいな決意は感じとれる。

「よっしゃ!やるぞリリィ!!」
「…!!」
「封印なんて吹っ飛ばすぞ!!」
「…!…!!!」

声はでてないが、えいえい、おーっ!っと聞こえる。天然なのか、純粋なのか。間違ってリンゴの木に実をつけた宝石を、誰がどう責めるのか。



つぷぷ…

「――ッ!!――ッ!」

つぶ…っちぶ…っぷじゅ

先ほどだした精液が、肉物押されて入口から流れていく。歌姫はミスラにしがみつき、爪を立て、膜の向こうで叫びをあげる。ミスラの勘違いかもしれないが、顔を見ていればなんとなく言ってる事が分かるものだ。

…やっぱやめようか?
…つ、つづけてください
…痛くない?
…さっきよりは…もっと、強くでも…大丈夫です…ぁぅぅ…ソコなら…

じゅ、っじゅ、っじゅ、っじゅぽ。ぷじゅ…

…ぅぁ…み、ミスラさん…
…ん?
…ヘンです…私…わたし…やぁ…
…リリィ
…ヘンなの…ヘン…わかんないけど…なにこれ…かゆい
…か、かゆい?かゆいってなにさ…

ちゅこっちゅこ…ちゅぶ。…ぢゅっぢゅっぢゅ。

…は…うく…
…こんなんとかこんなんとかしてみたり…
…はう!
…調子に乗ってこんなんとか…
…んぁぅ!!
…な、なに?
…ミスラさん、ミスラさん…!
…どうしたどうした
…わ、わかりました私!今の…こういうことですね!!
…いやいや、そんなはしゃがずに…
…ん、あ…すごいです…こんな風に…なるんだ…ぅぁ

「お…」
「……!!…ぁ、!…ぅ!!」
「がんばれリリィ…もう少しだ!」

ちゅぱん、ちゅぱん…ちゅこ。きゅぶぶぶ。

「―――ッ!…ぅ…!…っこ…」
「こ?」
「――…!…!っんん!!」
「ん?」
「――――――!!!!」
「リリィ!今だ叫べ!!」



「おまんこっ!おまんこおまんこおまんこ!!!!」



どびゅ…どびゅ…どぴゅ…

「…………へ?」
「おま…ん…え?…きゃぅ…いや、私…あぅ…お嫁にいけない…」

少女の上半身はワタワタと逃げだそうとするのに、膣はきゅうきゅうと肉物を搾る。ヨフネよ、いたいけな少女になにをやらせるのか。


・・・・・・。


ゾゾルドとキルソロが帰ってきた。

手を繋いで、これから学校に行く友達のように。あいも変わらず裸なのだが。

「いやぁ、やはり夜は冷えますなぁ、失敬、ドロを落としますゆえお湯だけ貸してくだされば…」

いいつつ、土鍋の外でキルソロの背中を流すゾゾルド。キルソロに嫌がる素振りはない。

「めでたしやねぇ、ミスラはん」
「うんうん」

ミスラの腹の上で踊っているのはシラカワヨフネ。耳元ではお湯がちゃぷちゃぷはじけて、ミスラの脳をぼうっとさせたりさせなかったり。
首の周りでは、ティコネットの尻とミルチアのふとももがこすれあって、肉の摩擦の熱とにおいが、いやらしくミスラの脳髄を焼かんとしている。

「んぁ…ミルチア…それ…」
「こ…こうか…?…ん、ぁ…ぢゅぶ、…」

まるで2人のネトネトの愛撫をおかずに、ヨフネの膣で己を慰めているようだった。ティコネットが誘導し、ミルチアがフラフラとそれに従う。
沈み込む指。溶け合う肌色。おっぱいがおっぱいに押しつぶされて、押出された乳首をくちびるがしごく。

夢中になって互いをむさぼるから肝心の果肉はお留守になって、じれったそうにモジモジモジモジ。ミスラが充血したそれをソッと指で撫でただけなのに、ビックリしたように腰を引く。

「…ふぁ…んん、ん、…っ!っぁ」
「ティコって…案外女の子好きだよね」
「…ん?ん…ふふ…ウチの男は、ロクなのがいないだろ?」

妖しく笑いながら、ミスラの顔に恥丘を寄せる。恥毛の生え際まで見せつけるよう、奉仕を怠ればヒザで小突かれる。

「ミスラはんのいけず…ウチばっかに動かせて…」

ヨフネが、ぺちぺちと尻をぶつけるように動く。ミスラ、ティコの腰にしがみついて安定を得、しばしヨフネの相手に専念。そうするとミルチアがいらだって、腕をねじりあげるもんだからそっちにも気を回す。

「おやぁ!?ゼンゼン空いてませんな、どうしたものか」
「お、じゃぁここ使う?」

土鍋に戻ったゾゾルドとキルソロに、ティコが席を譲ろうとする。席て。

「…あ、…その、大丈夫です…あまったトコで…」

随分引っ込み思案になったのはキルソロ。あまったトコて。

「なんじゃ、随分殊勝になったのう」
「キルちゃん、元々素直な子ぉよ…あん」

ヨフネは子宮口でコリコリとミスラの尿道をこすり、ミスラの尿道はびゅるびゅると精子を預ける。角度を調節、手で搾るように肉茎を抜きやり、また奥へ。亀頭の先に感度はなく、残り汁が搾られるときだけ心地よい。
他人行儀な性の音。ようやく抜かれた肉物を、ヨフネは陰唇で丁寧にこすりあげ、余韻を噛締めるための休息をミスラに与える。プロの技だ。


・・・・・・。


10人の美女少女が、土鍋の円周に沿うように並んでいる。向けられた尻の中央にはミスラ、誰に射精するのも自由だった。

「ミルチアー」
「ふゃ…、あ、…ん!」
「ドルキデー」
「ぁぁ…ミスラ様…」
「アザカゼー」
「……ん」

丸くえぐられた陰肉から、断続的に噴きでる放物線。鍋の中は、精液と愛液とローションと汗とよだれとなんやかんやでなんだかどろどろし、生ぬるく、気をつけないと足元がすべる。

「ふにゃ!」

いってるそばからミルチアがずっこけた。綺麗な髪が台無し、頭からぬるぬる湯につかり、化けてでたみたいになる。

「心臓はもう大丈夫?」
「ん…?あはは、そういえばそんなのもあったな…」
「ミルチア…」
「大丈夫だよ…すごく晴れ晴れしてる」

ミルチアはそういうと、ミスラの手をとって自分の胸に当てる。トクトクと血液の送りだされる音。少しずつ、早くなる。

「ん…ミスラ…」

尻を抱き、身体を割り込ませる。互いのリズムはもうなんとなく理解できていたので、身体のつながりよりも精神的な交わりに重きをおくことができた。
胸の先端に触れる。指に押さえられた乳首が戻ろうとする。小さな火花。くすぐるように背中を撫で、身体を密着させると、少女は恥ずかしそうに眼をそらす。おでこへのキス。ほほ。くちびる。
逃げることのできなくなった瞳を捉え、うすく開いたくちびるの中へ舌を流し込む。肉と肉の摩擦が意識される。少女のふとももは震えている。

「ん…ちゅぷ…ぁ、……――ん!」

ミルチアはわずかにミスラのあごをかむ。白い歯が皮膚の表面をこする。濡れたくちびるが、空気をおいだし、首筋を吸う。吸われた場所が熱くなり、毛細血管がはぜていくのがよく分かる。少女はそれでもキスをやめない。

「ん…ん、ぁ…ふぁ…」

そのまま下から上へ、こするように性器を突上げる。衝撃が少女を抜け、ミスラを抱きとめる腕にも伝わる。胸板の上で、豊かな胸が形を変えている。先端が何度も何度もこすれていく。

「ミスラ…だめぇ、わ…私…ん、ぁん!」

少女は全力でミスラを抱きしめる。ミスラは少しだけ手加減してそれに応える。

身体の中が濡れてゆく。あふれたもので埋められた膣道は、2人の隔たりをなくし、ミスラはちんこの位置をしばらく見失った。

「ミスラ…」
「ん?」
「私…感謝してる…」
「……。」
「…呪われながら生まれてきて、ずっと今まで眼をそらして生きてきた…喜んだりとか…楽しんだりとか…そんなことしたって、どうせすぐに死ぬんだろうって…ずっと思いながら生きてきた…」
「……。」
「まして人を好きになるなんてな…母の神経が理解できなかったよ…」
「……。」
「そしたらお前…いきなり私の目の前に現れて…ふふ、…あはは、…いきなり死んで見せて…わけがわからなかったよ、私は何を怖れていたんだって…」
「いやあれはね…」
「感謝してるんだ…私…。お前が思っている以上に、私は…お前のこと…」
「ミルチア…」
「感謝してるんだよ…ミスラ」


・・・・・・。


「無駄に終わったわけじゃが…」
「どうしたのさモナモナー、難しい顔して」
「死をもたらすもの…か。分かっていて手をだしたのじゃがの、ワシもザクロも」
「ああドルキデ…そんなテクをどうやって…」
「んは…あふ。…きゅむ、きゅむ。…今思いつきました…ん、ん」

「結局は…分かったフリをしていただけだったのかのう…」



深々とため息をつくモナメテオ。ミスラの股間では、ドルキデ、キルソロ、リリィの3人が、舌の花弁で花を咲かせている。

「こうでしょうかミスラさん…私、よくわからなくて…」
「考えすぎだよリリィ。もっとこう、ある程度は身体の動くままに…おおお」
「犯罪ですよミスラさん……ヘンタイ」
「いつものキルキルだなぁ、うんうん」
「キ…キルキルってなんですか!…もう…別に良いですけど」

ミスラはどんどん陽気になっていく。結論からいえば、儀式はたいした効果をあげなかった。



「もう…無理なのかモナ…」
「すまんのうティコ…ワシの魔力が…もうもたんわい…すまんのう…」

モナメテオの、憔悴しきった顔。乱痴気騒ぎの陰で、ずっとミスラの魔力を抑えていたのだ。少しでも心得のあるものなら、その仕事がいかに膨大なものであるか、容易に理解できた。
ミスラと性交すれば魔力を回復することもできる。もちろん彼女もそれを繰返している。単純にそれ以上なのだ、彼女の労力は。

「そうか…どうなってしまうんだろうな、私たち」

ティコネットはもう、心の準備に入っていた。もちろん、どれだけ予防線を張っても、死という事実は彼女の世界を抉りとっていくだろう。今まで何度も経験してきたこと。

「いやだ」
「ミルチア…?」
「私は認めないぞ…宝剣とやらがあればいいんだろう?探してくる…」

「ま、待ちたまえミルチア君…探すといってもどこを…」
「この状態でミルチアはんが抜けはったら、今以上にバランスがくずれますえ」
「く…っ!」

キルソロが走って逃げた頃とは事情が違う。

「だがどうする!?すでに諦めたというのかお前たちは…!!それでも…」
「すまんのう…けほ、けほけほ」
「メテオはん、しっかりして…」

「ちょっとションベンしてくるよ」

「ミスラ…?」ティコネットの不安げな声。
「お主…今ここからでたら…」
「大丈夫だよーモナモナ、あと20分くらいなら」
「ミスラお主……。…そうか、お主は…」
「おいミスラ…待て!!…いかないでくれ!!ミスラ!!」

追いすがるミルチアの手を、ゆっくりと解くミスラ。その顔に曇りはなく、穏やかな笑顔が包んでいる。

「大丈夫だって、戻ってきたらまたしようよミルチア」
「ミスラ…ミスラ…!!」

ミスラは階段を降り、手を振りながらとぼとぼと岩陰を目指す。頭の中にこれから死ぬなどという自覚はない、ただただ陽気に、音楽でも聴きながら太陽の下をドライブしている感じ。



「ふぃー」

じょぼぼぼぼぼぼぼぼぼ…ぽぽぽ…

「うー、さみぃ」

身体が冷える。すぐにまた土鍋が恋しくなる。あそこは良いところだ。ずっといたくなるほど良いところだ。はやく帰っておっぱいにもまれよう。誰と誰にもまれよう…

「うげ…」

げぼぼぼぼ…ぼと

またなんか白いのがでた。ちょっと緑ぃのが混じってる。

「んー?」

転倒。

どうやったら手足が動くのか、やり方を忘れてしまった。

人肌が恋しい。死にたくないと思う一方、少しの間眠るだけだとも思う。



「セー先生…アル…」

思いだしたのは、故郷の皆。あれから随分いろんなことがあった。

「ザクロねーちゃん…ルル…ユピゼル」

仲間の顔が流れていく。カリンザ、グリオー、ラブは生きているか。

「皆…うう…」

手が虚空に伸びる。誰がそれを動かしているのかよくわからない。どこに伸ばしているのかも分からない……



もにゅもん



「きゃぅー!」
「……んお?」
「あーうー?ゃぅ!」
「……んおお?」

白い髪、白いローブ、白いおっぱい。

「……マユー?」
「きゃぅ、きゃ」

少女はミスラの顔を舐めくりまわす。まちたまえ、今ゲロを吐いたばかりだというのにこの子はどっから…その時だった。



「お困りのようですな!!」


「んあ?」

「お客様のニーズがあれば、例え火の中水の中、野を越え谷越え山を越え、笑顔で行こう砂漠の海へ!史上最強コンビニギルド、黄金猫商会でございまぁあああす!!!」
「いらっしゃいませーー!!!!」

「きゃぅー!!!」
「………な…なんだこりゃ」

突如崖上に現れた、横一列の制服女の子集団。やまぶき色のフリフリミニスカート、ネコのバッジにボーダーニーソックス。なんだこりゃ。

「……なんだこりゃ」

2回言った。


・・・・・・。


「シャマニ…!!」
「おやーん?奇遇ですなぁミルチア殿、これはこれはリリィ姫、御機嫌麗しゅう」
「お友達ですのん?」
「途中まで…私たちを送ってくださったのです」これはリリィ。
「なにをみずくさいことをおっしゃる!金も貰わずに護衛を引き受けてくれるなんてなんて平和なボンボン…もとい、もちつもたれつの良い関係だったじゃぁありませんか。アレですか?目的は達しまして?お宝はありましたかね?こっちの方はさっぱりで…」
「達したといえば達したといえるのかな…しかし…」これはエルエン。



女商人シャマニ。

ピッチリとしたスーツに身を包み、切れ長の眼に高そうなめがね。感情にあわせて頭頂でしばった金髪がチョロチョロ動く。よく開く口はちょっとツバを飛ばしすぎ、それでも体中に満ち満ちた力強いエネルギーが、彼女を美人に分類している。

彼女率いる黄金猫商会は知る人ぞ知る商人ギルド。大陸中に流通ネットワークを張り巡らし、金になるならどんなダンジョンにも出没、儲けがでなけりゃ薬草一つ譲らない。
蛇のように戦車を繋いだ連結装甲キャラバンは、戦闘力はモチロン、食料プラント、医療設備なんかも完備していて、その気になれば孤立した城壁都市くらい征服できるといわれている。



「ヒスカ…なにやってるんだお前…」
「ぁぅ。ティコさんです」
「おーう、折れちったんだよー、足…」

ヒスカ、ガニメロ、ミルケロル、マユー。彼女等は途中の階層でワタワタしているところをシャマニに拾われていた。わずかに和む空気。分かれてからそんなに日がたってないのに、ひどく懐かしい。

「お前たちだけか…?」
「く、く、クリスさんもいますですよ…はい」



一方ミスラ。通されたのは妖しげな魔術設備の整った牽引車両。ほこりっぽく、ただでさえ薄暗い洞窟の中で、さらに暗い。

「起きとるかの…ミスラ」
「ん…モナ?」
「少しだけ…希望の光が見えてきたぞ…見ないことにしたほうがよかったやもしれぬが…うむぅ」

モナメテオの後ろから、のっそりと黒光りした影が現れる。歩く深海のワカメ。モナメテオと同じくらいの背丈をしたソレは、どこからが服だか分からないくらいもっさもさの髪の毛に覆われた人間だった。

「こやつはスケアクロウといっての…旧い知り合いなのじゃが…すまんミスラ…ワシを怨むなら怨めよ」


「うひゃはははは!!おめーかみすらってのぁ」


「どあぁああ!!なになになんだ!」

ムッとするような体臭。髪の毛にはコケのようなものが張り付き、それがフケであることを認識するのに時間を要する。やけに幼い声のクセに、ちょっと酒焼けして、しゃべり方は肝臓がフォアグラになった商売女のそれ。

「うけけけけ、こわがるんじゃぁねぇよう、これからおめーさんを楽にしてやろうってんだ…まぁ、行く先が天国か地獄だかはしらねーが」
「モナ…なんなんだよこの子はいったい…」
「うげっ、なんだなんだぁギンギンにおったてやがって…てめぇ散々お○んこしといてまだ足りねぇってか?どうなんだ?あ?どうなんだよ?」
「ど、どうなんだっていわれても…いたた…」
「んだよ、オレ様みてーな幼女に踏まれてよがってんじゃねぇぞブタ。どうしよーもねーな、うけけけ、おめーみてーな年がら年中発情三葉虫にはコレ」
「な…なにそれ」
「これか?これは魔界のイソギンチャク。オレ様がねちねちと調教と品種改良を繰返してダナ、よりエロく、よりエゲツナク…どうよこのお○んこのにおい、リアルだろ…?」
「そ…そんなもの何に…」
「何にって?そりゃおめー、こうしてこうしてオレ様の術式を加えてだな…」
「……お、おい…まさか、まてまてはやまるな、話し合おう!話し合おうって!!!!」」
「そりゃーー!!」


「アーーーーーッ!!!!」


(中略)


「うぐ…ぇぐ……」
「よしよし、ほれ泣くでないミスラ…」
「だってモナ…オレは人として…人として…」
「まだ3ダースあるぜぇー」
「わぁぁっぁああ!!!!」


(中略)


「終わりましたかい?スケアクロウのダンナ」
「おおうシャマニ。大量だぜぇぇ、うけけけけ」
「ははぁー、なるほど。こりゃぁクリス譲ちゃんのいってた通りだ。ご紹介遅れましてミスラのダンナ…ってありゃ?」

「うぐ…、えぐ…ちんこ痛いよう…」
「峠は越えたかのう…これで、しばらくは、な」
「こりゃ、後にしたほうがよさそうで?…そんじゃまた、ああ、ここの設備は自由に使ってくださって結構ですぜ…いやぁ儲かった儲かった」
「まずは眠れミスラ。…ゆるりとな」
「うう…モナぁ…」


七層文明第七層。地表に最も近いところ。冒険6日目が始まった。


・・・・・・。


「さあー、たんと召し上がってくださいねぇ皆々様!!」

目の前に並べられた金色の皿の山。花の香りに山海の珍味。ジュージューととろけそうな肉は見ているだけでよだれがでてくる。
薔薇色のジュースの中には宝石のような果物。ただの水でさえ、その清潔さが舌でわかる。

「あ、あの…シャマニ…さん?」
「はいはいなんですかミスラさん、あ、シャマニでいいですよ、おや飲み物がきれてらっしゃる、おーい!!」
「いや、その…なんでこんな」
「ああどうぞどうぞ、こちらの極楽地獄鳥のモモは絶品ですよ!この灼熱マンボウなんて鮮度抜群、さっきまで生きてましたから…」
「フガモガ…」

「あぅ、このシバヅケちょーおいしーです」
ミルケロルがミスラのひざの上でほっぽぺたを押さえる。あいかわらずの超絶自分ペース。対面のキルソロは敵意に満ち満ちているが、そことグッとこらえて、その横では料理達者なティコもうなっていた。

「う、うまいな」
「ティコはん、そこのおつくりとってぇ」
「きゃぅー」



食って飲んで休んで。

トイレにたったミスラは、遠くで聞こえる喧騒にひどく安心する。また平和な日々に戻ったような心の安定、スケアクロウと呼ばれた少女のおかげか、ミスラの力はずっと一定に保たれている。

同時に、この状態がそう長くは続かないこともよく分かる。焦燥感。そういえば、クリスはどうして顔を見せないのか、ミスラはトボトボと連結戦車の中を歩きだした。

「お、いたいた、一号」
「へ?」

医療品のにおいをかいだ気がする。ミスラが戦車と戦車を繋ぐ連結部に差しかかった時、交差する通路の横から声がかかった。

「一号、結果はでたのか?」
「え?え?あの?」

黄色い花の煮汁で染め上げたような髪の毛。一本一本が細くサラサラしていて、後ろで一つに束ねている。ひかえめな化粧に、火のついてないタバコ。虫止めのピンみたいに鋭敏なまつげがキツイ性格を想像させ、糊の利いた白衣がそれを肯定する。現れたのはそんな女性。

「誰かとお間違えでは…」
「ん?」

白衣の女性はがっつりとミスラの顔をわしづかみにすると、吐息がかかるキョリまで引寄せる。押しつけがましくない程度の、いいにおい。

「お前は誰だ。名を名乗れ」
「ミ、ミスラと申します…」
「ミスラ…?ああ…」

「ブラドさまここにいたのか」

今度はミスラの後頭部に声がかかる。抑揚のない、見事な棒読み。

「どうしましたどなたですかこの方は」
「ウム、例の提供者と同じ名前だ」
「ていきょうしゃとは例の精子をだすしか脳のないイカれた発情雄のことですかちがいますか」
「間違ってはないがいい過ぎだぞ一号。ここに本人と思しき人物がいるのだ」
「不適切ですか気おつけるべきですかどうしますか」
「不適切だな、気をつけるべきだ」

「あの…」

新たに登場した女性は空き箱みたいな眼をしてミスラを覗き込む。覗き込むというのも不適当で、ミスラの後ろの何かを見ている感じ。
うすい紫色の髪は腰まで伸び、着ているものは白衣なのだが、なんだか変なパイプが通っていて、金属の板が張りついている。

「ていきょうしゃをどうしますか殺しますか解体しますか投薬しますか」
「どれも不適切だよ一号」
「食肉加工業者が喜ぶと思う…」
「それはジョークだね?残念だが意味が分からないよ」

紫色の女性が発する言葉は、宇宙人の交信のように不協和音をかなで、拭いきれない気持ち悪さを耳の奥に残していく。この人は何がいいたいのか、自分の中で確認するための情報をくれないからもやもやする。
それをすべて冷静に対処し、次々と処理していくのはくわえタバコの女性。頭がいい人なのか悪い人なのか、少なくとも眼が悪いのは確実で、たまにミスラと紫色の女性を取り違えたりする。

「ここではなんだ、コーヒーでも飲まないかね?キミには丁度聞きたい事があるのだよ」
「え?…いや、その…。今あんまり時間がなくて…寿命的なものが」
「ああ知ってるよ、まぁそんなに心配することじゃないだろう。大丈夫だよ」
「え…?あ、大丈夫って…た、助かるんですかオレ…」
「例えばだが、キミの精巣を切りとって人造臓器に接続する。さすれば永続的な精子工場ができ、キミの遺伝子は存続する」
「…へ?」
「例えばだが、キミの身体を少しずつ切りとってパズルのように繋ぎ合わせる。キミはほっといても回復するから注意するのはパズルの鮮度だけだ。完成の暁にはこの世に正真正銘キミ自身が2人存在することになり、オリジナルが爆発したところで問題はない」
「…あの…」
「…まぁ魂が宿るかどうかはやってみなくては分からんが、別に失敗したってキミは爆発するまで死なないし、なんならコピーを山ほどとって…ふむ、最悪でもやはり精子工場にはなるだろうな…」
「…へ?…ちょ…」
「そういえばキミの場合、頭を切り取ったらどうやって治るのかね?身体が生えるのか、頭が生えるのか…どれいっちょ試して…うひゃひゃひゃひゃ」
「わぁぁぁぁあああぁぁぁあ!!!!まって助けて!ごめんなさいごめんなさい!!!」

「とまぁ、これがジョークだ」
「なるほど勉強になったブラド様」

そんな声は聞こえない、ミスラまろび逃げだし、適当に扉を開ける。そんなことうかつにするもんだから当たり前のように女子更衣室に飛び込む。目も眩むばかりの肌色と、やまぶき色の制服、ぱんつ。

「ひゃっ!?」
「んぁ…え?」
「はれー…?」
「いやーーーっ!!!」

「わった、った、っご、ごめん!!ごめん!!!」

花瓶やらボールやらぱんつやらの砲撃を受け、反対側の扉を開けるとそこは今まさに使用中のトイレ。

「きゃぁぁあああああ!!!」
「わあぁぁああ!!!見てないから!見てないから!!!」
「違うんです!私が悪いんです!!!」
「あぁぁあぁ、ゴメンゴメン…!!!…って、え?」
「カギをかけなかった私が悪いの!!もうダメ!最低だわ私は…こんなの、扉を開けた人に気まずい思いをさせるだけじゃない!!」
「あ…いや」
「そうよ!それよりもその人がもよおしてたらどうするつもりだったの!私のバカ!!私なんかが分もわきまえずにオシッコなんてするからこんなことに…」
「え?え?あの…なんだかわからないけどとにかくゴメン!!」
「よかったら一緒にしましょ!?ねぇまって!!!」

逆に謝られてビックリしたミスラはその場を逃げだし、なんたる運命のいたずらか、つまずき転び、あわや段差の角に頭をぶつけると思いきや、回転しながらフロ湯に飛び込んで、最終的に泡にまみれたおっぱいに着地した。

「ふぎゅ……ぷは!」

「おおっ…と、大丈夫かい少年?ハッハッハ」
「あらやだ、かわいー」
「おいセネア、その子例の…」

「あ、あああ…あ、すいません!!信じてもらえないかもしれないけどわざとじゃ…」

「ハハハ、そういうことにしておこうか、気をつけたまえよ!」
「よかったらいっしょにはいるー?きゃはは!」
「こらキャリベル、困ってるでしょ…ほらキミも、ホントにはいりたいなら服くらい脱いできな」

戦車の中にしてはお風呂場は広い。車両一つ丸々当てられていて、3人くらいではいるのが適当人数。丁度今、ミスラを囲む女性がそうであるようにだ。

はてな、この商隊では着替えを覗くのが一番罪が重くて、トイレは覗かれる方が悪くて、おっぱいに突撃するのは許容範囲…もうわけが分からない。

ミスラをおっぱいの間に抱える女性は、実に整った顔立ちで、眉毛がキリリとしており、男装すれば女性に喜ばれそうな顔をしている。実際には髪が長く、間違っていないのになんか変な違和感がある。それは妙にキザったらしいしゃべりかたのせいか。なんか歯が白すぎるし。

キャリベルと呼ばれた金髪の女性は、何がおかしいのかずっとニヤニヤしている。他の2人は、一応隠すところはさりげなく隠しているのに、この人だけは堂々とさらけだして、むしろ胸を張っている。確かに、どこを見ても恥じるところなどない、完璧なプロポーション。

「あ、ああ…あの…」
「なによ?どうしたのよ」
「いや…」

前2人の、モデルのような体型を眺め見て、その顔の位置を念頭においていると3人目がどこにも見当たらない。それもそのはず、ちっこいのだ、ゾゾルド達と同じくらい。

「お前今チビって思っただろ」
「……思ってません」
「チビのクセになんで上から目線なんだって思っただろ」
「……思ってません」

「よく見ろ生えてんだろーが!!!」

「わあぁっぁあぁぁあ!!!ごめんなさいごめんなさい!!でも大丈夫!もっとちびっこくてじじ臭いのが知り合いにいるから…」

「フォローになるかぁぁああ!!!」
「アッーーーーーーー!!!」

「きゃはははは!エノにちびっていったらだめだよー、ぼーや」

いってないはずだ。理不尽だ不条理だ。太陽がまぶしいから悪いんだ。ミスラはほうほうの態で泣きながら逃げた。


・・・・・・。



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