自作ラムネ製作記

ラムネと出逢ったのは、ある寒い日の事だった──

基本材料
・重曹     何かとシュワシュワ目立つ花形役者
・クエン酸  これが無ければ始まらない、酸味を加える二枚目
・粉糖 甘い言葉で食者を惑わすプレイボーイ
・片栗粉    土台を固める文字通り、縁の下の力持ち
・水       あ、ああ、うん。いたね。

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 材料が全て揃う。さあ、戦争の始まりだ!
 私は調べた分量どおりに材料を混ぜ合わせ、神聖なる粉──裸夢音──の製作に取り掛かった。
「重曹(小1)、クエン酸(小1)、粉糖(片栗粉入り・大1)……」
 大いなる野望達成の高揚感からか、何度も材料を反芻してしまう。
 そして私は、神の領域に一歩踏み入った。
「水ゥ(微量)!!」
 吹き上がる気泡、立ち込める酸気。
「完成、なのか……?」
 誰にでもなく、私は問うた。
 実にあっけないものだった。製作は一瞬で終わってしまったのだ。後は乾燥させるだけ、そう古文書には記してある。
「ふむ」
 一つ頷いて、私は型が無い事に気がついた。そしてそのまま放置した。
 ──数時間後。
「遅い!」
 ラムネはいまだ乾燥していなかった。それどころかべた付く。
「失敗、なのか……」
 私は一口、それを口に含んだ。
「──!!」
 襲ったのは、痛烈な酸味。そして、炭酸。
 ラムネ特有の酸味に見え隠れする甘味や、粉っぽさはどこにも無かった。
 私は失敗したのだ。
 ここに罪の証として、生み出してしまった物体の近影を残す。
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 同じ轍を踏まないよう、今日は調合を変えてみた。
「重曹(小1)、クエン酸(小半)、粉糖(大1)、片栗粉……」
 これで、理論的には神聖なる粉──裸夢音──が完成するはずだ。
 後は、「水……!」混ぜる!
 直接重曹に水が落ちなかったので、弾けはしなかった。
「クッ……!」
 粘りが強い。さすがは片栗粉だ。なんのこれしき。
 私は成功を信じ、混ぜ続けた。しかし圧倒的に水が足りていないのが明らかだったので、途中で追加した。
 ──数時間後。
「やはりべとついている……」
 水の入れすぎだ。これは明日にでも改善できる。
「問題はべとついているのに粉っぽいというところだな」
 味のバランスは絶妙と言えよう。もう少し酸味が強いほうが個人的には好みだが、これでも昨日と比べれば十分だ。
 少し片栗粉を入れすぎたらしい。神の味に一歩、近づいた。
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本日も作成したが、相変わらず水分量が多い。明日は変えてみようと思う。
味は究極に近づいた。
変わりばえのしない写真を載せても仕方がないので、今日は載せない。

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 今日こそは。
「重曹(小1)、クエン酸(極小3)、そして水一滴」
 文献をあさり、作成手順を少々変えてみた。
 これらを混ぜ合わせると、ぼろぼろとした粉状の物になる。
「粉糖(大1)」
 水が足りない。さらにもう一滴。様子を見ながら追加するのが理想のようだ。
 そう、これだ。これこそが神聖なる粉──裸夢音──だ!
 ついに、ついに私は成し遂げたのだ。裸夢音──いや、ラムネと名づけよう──ラムネを造りえたのだ!
 瞬間を閉じ込める魔箱──夏目良──の弾倉、フィルムケースの蓋を使い、整形を施した。
 これが、これこそが神聖なる粉、ラムネだ!Image334
 味は、ここ数日で調整を行った。クエン酸をほんの少し少なくする事が重要だ。
 そしてその比率は重曹:粉糖=1:4である事がわかった。
 なお、わかっているとは思うが、乾燥は自然乾燥が好ましい。電子を当てる方法を取ると重曹が反応し、膨れ上がるからだ。
 文献によれば一日放置が望ましいらしいが、私はこのまま食べるのもオススメである。
 何事も作りたてが一番だからだ。
 なお、粉糖を片栗粉とブドウ糖に置き換える事もできる。その場合、裸夢音が氷属性を纏うようだ。
 ブドウ糖はなまくらでは切れない物質のため、粉末を入手するのが好ましい。
 この実験結果が何かの足しになれば嬉しい。
 続報があれば、私も続きを記すだろう。
 ラムネにより、あなたの心が豊かにならんことを祈る。