アンジェイ・ワイダ作品はいくつか日本語のソフトが出ているものの、残念ながらというかもちろんというか、レンタル屋には置いていない。しかしさすが名作と呼ばれるだけあって、図書館には何本かの所蔵があった。感謝感謝。というわけで、今回は「灰とダイヤモンド」を借りてきた。
描かれるのは1945年5月、ドイツ降伏直後のある一日だ。視察に訪れたポーランド労働者党幹部の命を狙うゲリラの青年は、ほんのつかの間の恋に浮き立ち、自身の生き方に悩み、傷つきながらも任務を遂行する。しかし翌朝、青年もまた射殺され、ごみ捨て場の中で苦しみながら息絶える。
映画で描かれているのはこうした一夜の出来事のみだが、原作はもう少し周囲の事情がこみいっているらしい。その名残りか、主人公に直接関わる人物以外にもいわくありげな人間が登場する。パーティに集まってきた人々、組織の少佐など、かれらは各々が抱える事情をそれとはなしに語っており、またその根が共通していることからこの映画は群像劇的と言えるだろう。
ために、状況としては占領が終わったところだというのに、漂う雰囲気は開放的なものとはいえず、全編フィルムの光と影によって美しく彩られた陰鬱さで満たされている。特にラストシーンのなんともいえない悲痛さが印象的だった。